EVで出遅れている上海汽車もFCVには早くから研究開発に取り組み、2014年の北京モーターショーでFCV「栄威950(Roewe950)」を一般公開した(写真:Imagine China/amanaimages)

 映画『バック・トゥ・ザ・フューチャーⅡ』で描かれた30年後の未来を現実に迎えた2015年10月21日、トヨタ自動車の燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」が米国で発売された。主人公マーティ役のマイケル・J・フォックスと天才科学者ドク役のクリストファー・ロイドを起用したプロモーションビデオは、「YouTube」の再生回数が数百万回を超えるなど、注目の高さをうかがわせた。

 そのFCVに今、激しい逆風が吹いている。世界各国で新エネルギー車(新エネ車)を推進する規制が相次ぐ中、世界の主要自動車メーカーがFCVではなく、電気自動車(EV)へとシフトしているからだ。

 2016年に米国を超え、世界一の新エネ車市場へと躍進した中国においても、その動きが鮮明となっている。中国自動車工業協会の統計によると、2016年の新エネ車販売台数は50.7万台で、その内訳はEVが8割、プラグインハイブリッド車(PHV)が2割となっている。一方、中国国内で販売実績がほとんどないFCVは統計データすら存在しない。

 今年に入り外資系自動車メーカー各社も、中国国内における新エネルギー車の生産・販売の計画を矢継ぎ早に発表しているが、その中心はEV、PHVだ。グループ全体の売上高の約4割を中国で稼いでいる独フォルクスワーゲン(VW)は2025年に中国で150万台のEVを販売する目標を掲げた。

 米ゼネラル・モーターズ(GM)は2020年までに新エネ車を10車種投入予定で、2025年までに年間販売数50万台を目標に掲げている。ルノー・日産アライアンスも東風汽車と合弁会社を新設し、中国市場向けにEVの共同開発を行う計画である。

 EV一色に染まっているように見える中国であるが、個別の都市に目を向けると異なる様相が見られる。例えば、上海市で進むFCV普及計画だ。

「上海市燃料電池車発展計画」の概要

 2017年9月20日、上海市発展改革委員会、上海市科学技術委員会、上海市経済・情報化委員会が連名で「上海市燃料電池車発展計画」を発表し、短期、中期、長期の具体的数値目標が明らかとなった。

 短期(2017-2020年)目標では、FCVのバスやトラックのテスト普及を積極的に推進し、水素ステーションを5~10か所、FCV乗用車模範エリアを2カ所建設し、FCV普及台数を3000台にする。また、FCV関連企業を100社以上集積させ、水素エネルギー・燃料電池技術の研究開発センターとFCVテストセンターをそれぞれ1カ所ずつ設け、関連産業で年間生産額150億元(約2500億円)以上を目指す。

 中期(2021-25年)目標では、水素ステーションを50カ所建設し、FCV乗用車を2万台以上、バスやトラックなどの特殊車両を1万台以上にする。また、国際的に影響力のある完成車メーカーを1社、動力系統企業を2~3社、コア部品企業を8~10社育て、世界トップ3に入る研究開発および公共サービス機関を2社にし、関連産業で年間生産額1000億元(1兆7000億円)以上を目指す。

 長期(2026-30年)目標では、上海を国際的に影響力のあるFCV都市にまで育て上げ、中国全土のFCV産業の高度成長をリードする。また、関連産業の年間生産額を3000億元(5兆1000億円)以上にまで高め、全国の燃料電池商品の多様化を目指す。

 野心的な目標であるが、上海は達成に向けて動き始めている。

 全世界的なEVシフトが起こる中、上海はなぜFCVの普及を積極的に推進しようとしているのであろうか。その理由の一つとして、上海市政府および関連企業の思惑が一致し、官民挙げた取り組みにまで発展したのではないかと考えられる。