まだまだ続く「卒業=失業」

 中国の大学教育はエリート時代から大衆化時代へと転換している。米社会学者のマーチン・トロウは、高等教育の発展段階をエリート段階(進学率15%まで)、マス段階(同15%~50%)、ユニバーサル段階(同50%以上)に分けた。

 教育部の統計によると、中国の進学率は高等教育規模拡大政策が実施前の1997年には9.1%であったが、2002年に15%に達した後も右肩上がりで上昇し、2016年には42.7%にまで高まっている。

 つまり、中国の大学は既にエリート教育ではなく、大衆教育となっているのである。このように、大学進学率の上昇に伴い、大卒資格の価値が低下しているにもかかわらず、旧態依然のエリート意識が就職の足かせとなっているといえよう。

 「大卒で就職できなかった友人は卒業後何をやっているのか」という問題を私の学生に尋ねたところ、「無職で家にいる」という回答が多かった。理由は「安い給料はもらいたくないから」、「メンツにかかわる職には就きたくないから」、「肉体労働は将来性がないから」だという。

 要するに、思うような就職ができない卒業生は、家が比較的裕福であれば親のすねをかじる「啃老族」に、経済的に余裕がなく実家に帰れなければ大卒「蟻族」になるという構図となっている。

 今後も大学の卒業生は徐々に増加していくと考えられる。また、産業構造の転換は摩擦の伴う長期的課題であり短期間で実現できるものではない。したがって、「史上最悪の就職難」は引き続き「史上最悪」記録を更新し続け、中国の「卒業=失業」という構造的問題の解決には相当時間を要するであろう。

この記事はシリーズ「西村友作の「隣人の素顔」~リアル・チャイナ」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。