信用をスコア化し、急速に発展

 ゴマ信用とは、アリペイなど自身が提供する金融サービスの使用状況、信用記録のほかに、学歴や職歴、資産状況や交友関係などの情報をもとに信用スコアを算出。高得点のユーザーは様々な特典を受けることができるというサービスである。

 個人情報や信用履歴などのビッグデータを基に算出された信用スコアは、すでに多くのサービスに幅広く使われるようになっている。例えば、信用スコアが一定基準を超えると、借家やホテル、レンタカー、シェア自転車などのデポジットが不要になったり、消費者金融でお金が借りやすくなったりする。

 高い信用スコアがあれば海外旅行の際にも恩恵を受けることができる。一般に中国人がビザを取得するにはその国の在中大使館・領事館にいって手続きをする。しかし、ゴマ信用で高スコアを有するユーザーは、一部の国のビザ申請を、専用アプリを使ってネット上で行うことができるようになっている。例えば、シンガポールの場合は信用スコア700点以上であれば、資産証明や在職証明、戸籍証明といった煩雑な書類は必要ない。ルクセンブルグは750点以上で申請可能だ。

 特典の効果もあり、信用スコアを高めるためにアリペイや余額宝、ホワベイといったアント・フィナンシャルが提供する様々な金融商品を積極的に利用する若者が増えている(詳細は過去記事「中国モバイル事情 決済を制する者が市場を制す」を参照)。

 ゴマ信用は急速に発展しており、「生態系の拡大はしばらく止まりそうにない」(日本経済新聞10月30日付)との楽観的な見方があるが、先行きの不確実性も高まっている。

 ゴマ信用を含む8社はこれまで試験的に個人信用調査業務を行ってきた。正式ライセンスの提供がないまま3年が過ぎた2018年2月、新たに「個人信用調査許可証」が人民銀行より正式に公布された。ただし、ライセンス1号となったのはこれら8社の試行企業ではなく、「百行征信有限公司(バイハンクレジット)」という新しい会社だった。

 バイハンクレジットの資本金は10億元(約160億円)。筆頭株主は36%の株式を保有する中国インターネット金融協会となっている。この協会は「インターネット金融の健全な発展促進に関する指導意見」に基づき、人民銀行と国家の関連組織によって設立した中国政府系の業界団体である。

 バイハンクレジットは別名「信聯」と呼ばれている。銀行カードによる決済ネットワークの「銀聯」、アリペイやウィーチャットペイなど第三者決済サービスと銀行をつなぐネットワークの「網聯」とともに、中国人民銀行が主導する金融ネットワークの一部を担うこととなる。信聯には中国人民銀行征信センターがカバーできていない層の国民の信用情報調査が期待されている。

 個人の信用調査業務に関しては民間企業ではなく、中央銀行が主導する信聯という手法を採用した背景にあるのが、この8社の実態と国家の方針に大きな隔たりがあったからだと考えられる。