現時点では設置されたばかりであまり使われた形跡もなく清潔に保たれていたが、使用後はどうしても床や機械が汗で汚れる。当然定期的なメンテナンスも必要となる。広範囲にわたって分散したボックス一つ一つを人の手で清掃、修理するとなればそれなりのコストもかかるだろう。実際に、近所に設置された4台のボックスの内、一台は修理中マークがついた状態で2週間以上放置されている。
スマホ決済、位置情報サービス、ビッグデータ、無人店舗……表面的には先端技術をちりばめ華やかに見える中国のニューエコノミーだが、サービスの多くが「安価で豊富な労働力」を前提に設計されており、「労働集約型」のビジネスモデルとなっている。
大都市の農民工が減少
その中国モデルの代表例が「シェア自転車」 だが、最近北京では台数も減少傾向で、配置の「偏り」が顕著になりはじめた。シェア自転車はその特性から配置に「偏り」が生じる。例えば、出勤時間は住宅地から最寄りのバス停、地下鉄駅などに偏る。
ビッグデータなどを使って需要予測を行い、偏った自転車の配置を動かしてバランスを調整していたが、実際の作業を行っていたのが「農民工(出稼ぎ労働者)」だ。交通障害となっている自転車を並べ直したり壊れた自転車を撤去したりしていたのも農民工だが、最近は以前ほど見かけなくなってきた。
背景には大都市の人口抑制策に伴う農民工の減少があると考えられる。現在北京や上海、広州などの大都市では、人口抑制目標を明確に制定している。北京では常住人口を20年までに2300万人に抑える計画で、その影響を受けたのが「農民工」だった。郊外の不法建造物が撤去され、そこに住んでいた多くの農民工は立ち退きを余儀なくされた。
一方、フードデリバリーや宅配などの分野におけるワーカー需要は日増しに高まっている。北京における農民工の所得に関する直近のデータは存在しないが、ブルーカラーの労働市場がタイトになり人件費が高くなっている可能性は十分に考えられる。
無人ジムボックスもこのままのビジネスモデルでは、北京などの都市部で存続するのは厳しいのではないだろうか。我が家のそばの無人ジムがどうなっていくのか非常に興味深い。
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