前売りチケットの購入枚数は9位

 多くの中国人サッカーファンも試合会場まで観戦に押しかけた。本大会ではチケット購入者にFAN IDが配布され期間中に限りビザが免除されたが、北京首都空港のロシア行きのチェックインカウンターでもFAN IDチェックが必要で、慣れない作業にカウンターの担当者も「多すぎる」とぼやいていた。

「サランスクの奇跡」と呼ばれた日本vsコロンビア戦でも、試合会場は中国企業の広告で溢れた

 実際に、モスクワでも首からFAN IDをぶら下げた中国人観光客が多く目についた。FIFAによると、中国による前売りチケットの購入枚数は4万251枚と、国別で9位の販売枚数であった。旅行予約サイト、携程旅行網も、W杯開催期間中にロシアを訪れる中国人観光客は10万人を超えるとしていた。

 現地に行かない多くの中国人サッカーファンはテレビで観戦を楽しんだ。CCTVは全試合を地上波で中継し、北京のレストランやバーでもスクリーンを設置して客を呼び込んだ。好試合や大波乱の後は深夜にもかかわらずSNS上で試合に関するコメントが溢れた。日本対ベルギー戦の後も、「アジアの希望」「栄誉ある負けだ」といった肯定的なコメントが数多く目についた。

 中国人のサッカーに対する情熱はワールドカップだけに留まらない。国内のサッカー1部リーグ「スーパーリーグ」には、巨額な移籍金を背景に世界中の名だたるトッププレーヤーが集う。

 「スーパーリーグ」の会場には多くのファンが詰めかけ応援合戦を繰り広げる。北京市をホームとするのが「北京国安」で、日本代表監督も務めたザッケローニ氏を就任からわずか4カ月で解任したことで有名だ。その国安のメインスタジアム「工人体育場」は、オフィスやショッピングモール、飲食店などが集中する北京有数の繁華街「三里屯」のど真ん中にある。東京の六本木のような場所といえばイメージしやすいだろうか。試合当日、その街はサポーターたちが着るユニホームの緑色で染まる。

 今でこそ人気を博している国内リーグであるが、2000年代は一時期スポンサー企業やファン離れが深刻化した。その背景にあったのが腐敗だ。巨額のマネーが動くサッカー賭博組織が暗躍し、選手や審判が八百長に手を染める。言葉は文化を表すが、中国サッカー文化の中にも「賭球(サッカー賭博)」、「仮球(選手による八百長プレー)」、「黒哨(審判による疑惑の判定)」が浸透していた。

 国内リーグの腐敗は代表チームの実力低下も招き、02年の初参加以降W杯出場からも遠のいた。アジアカップなどの大会でも上位争いに加わることができず、失望するファンが相次いだ。

 中国サッカー界を覆う「黒い霧」を払おうと国家が動いたのが09年。南勇サッカー協会元副主席や張建強審判委員会元主任など重要人物を始め、チームオーナー、監督、選手など約60人が12年までに次々と拘束され司法の裁きを受けた。