都市部と異なる農村部の実態
現金需要が減っている一方で、ATMの台数は実は増加を続けている。その主な理由は、農村部での新設ATMの増加だ。中国人民銀行は15年から農村部におけるATM数を公表しているが、それによると中国全体における17年一年間のATM増加数は3.64万台で、その94%にあたる3.42万台が農村部での増加数であった。
背景にあるのが「農村の都市化」と「根強い現金需要」である。
近年、中国政府は農村部における都市化を積極的に推進している。農村部の開発に伴い様々な商業施設が新たに建設されれば、それに付随するATMの設置台数も増加する。
一方で、農村部においては依然として根強い現金需要が存在する。「農民工」と呼ばれる都市部の出稼ぎ労働者は、働いてためたお金を現金で故郷に持って帰ることが多い。特に春節の帰郷の際に顕著で、お年玉需要と相まって、毎年1~2月頃には現金流通量が急激に高まる。

中国人民銀行直属の『金融時報』が運営するネットメディア『中国金融新聞網(18年5月22日付)』によると、「教育水準や年齢・生活習慣など各方面の影響により、農村地区の現金依存度は依然として高い」という。また、ハード面の理由として「インターネットインフラや関連サービスが遅れている」ことも挙げられる。
ただし、農村部の都市化が一服すればATMの増加スピードは頭打ちとなり、現時点では遅れているキャッシュレス化も徐々に進んでいくであろう。
変わる銀行業務
消費現場のキャッシュレス化が進めば、銀行が現時点で行っている様々な現金業務が減るのは明らかである。
また、テクノロジーの発展に伴い銀行業務のデジタル化は着実に進んでいる。日本では当たり前となっている銀行口座自動振替が中国では浸透しておらず、水道料金や電気代、ガス代などの公共料金は、以前は銀行に実際に足を運んで支払っていた。昼の混雑する時間などでは1時間以上待たされることも日常茶飯事で、毎月とても苦痛だったが、今ではスマホを使って数十秒で支払うことができるようになった。
さらに、各銀行が提供しているネットバンキング、モバイルバンキングのサービスも充実している。口座の明細確認や投資商品の購入、他口座への振込、定期預金と普通預金の振替、ローン管理など、ほぼすべてのサービスがパソコンやスマホで対応可能となっている。
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