ジェームズ・ダイソンは、初のデュアルサイクロン掃除機をつくろうとして5000回以上も失敗した。1993年にようやく発売にこぎ着けたときは、最初のチャレンジから15年たっていた。この英国人発明家はその後ナイト爵を授けられ、革新的・先進的なデザインで知られる大企業の経営者になった。彼は次のように言う。

 「失敗は進歩に欠かせない要素です。成功から学ぶものはなくても、失敗からは学ぶことがあります。デュアルサイクロン掃除機をつくったとき、最初はごく簡単なアイデアだったのが、最後には斬新で興味深いものになりました。こうして自分でも思いもよらない場所へたどり着けたのは、何が通用して何が通用しないかを学んだからです」

 失敗するたびに彼のアイデアは刷新され、生まれ変わり、ついには革新的な発明へと進化したのである。

「失敗という贈り物」を受け入れる

 世界的な経済学者、アルバート・ハーシュマンの信条のひとつは、「失敗は革新と見識を生む強い力である」。言い換えれば、「失敗は創造の母」。グリットを鍛えるには「失敗という贈り物」を受け入れる必要がある、と彼は述べた。ダイソンは失敗するたびに、それを最終的な成功へ向けた一歩だと考えることができた。

 失敗や挫折から立ち直るのはもちろん難しい。その痛みを和らげるには、自分の見解を修正する練習をくり返し、状況を別の観点から眺めることだ。

 グリットは一切の人を平等にする。なぜなら、天賦の才能、経歴や資産にかかわらず、すべての人がどんなときでもそれを培い、発揮できるからだ。

 逆境下にあっても不屈の精神を発揮できる人、七転び八起きで敗北を勝利に転換できる人、障害を逆手にとって前へ踏み出せる人、子を守る母親のような執念でがんばりつづける人。そんな人たちこそが人生の真の勝者だということは、もう何度も証明されている。

 グリットを使えば、誰も見当がつかないくらい、遠くまで行き、たくさんの成果をあげることができる。

 さあ、立ち上がろう!

 (一部敬称略)

※本原稿は著者の了解を得て、一部、書籍『GRIT』から引用しています

『GRIT(グリット) 平凡でも一流になれる「やり抜く力」』
(リンダ・キャプラン・セイラー、ロビン・コヴァル著、三木俊哉訳、1620円)

 GRIT(グリット)は、いま米国で最も注目されている「成功のためのキーワード」で、「やり抜く力」を意味します。「真の成功」をつかむための最重要ファクターは、生まれながらの才能やIQではなく、GRIT(グリット)であることが科学的にもわかってきています(むしろ「IQの高い人は、自分を過信し、努力を怠る」)。しかも、GRITの素晴らしいところは、生まれつきのものではなく、学習によって獲得できることです。しかも、年齢は関係ありません。いつでも誰でも、GRITを身につけることができます。本書は、豊富な実例をもとに、GRIT(グリット)の身に付け方を手ほどきします。