本番の10倍厳しい状況で練習を積む

 グリットを身につけるためのポイントをいくつか紹介しよう。

 まずは「入念すぎるほどの準備を行う」ことだ。

 私自身、講演の準備には十分すぎるほど念を入れる。ほかの人もそうだろう。TEDトークの登壇者もそうだ。わずか14分のスピーチの準備に何カ月もかけている。登壇者たちは、まるで普段の会話のように自然な調子で話し、額をぬぐったり、途中でメガネを外したりするが、実はそれらを計算づくで行っている人も少なくない。

 入念すぎるほどの準備を行うことは、何かを成し遂げるためのグリットを養う助けになる。私の著書『GRIT』の第4章「安全ネットなしで」に、ニック・ワレンダという男性が登場する。彼は、安全ベルトも安全ネットも使わず、グランドキャニオンに張った綱の上を歩いて渡るというギネス世界記録を打ち立てた。これは、まさにグリットのなせる業だ。

 ワレンダによれば、安全ネットなしでも、彼にとってグランドキャニオンに張った綱の上は、完全にコントロールされた状況だという。なぜなら、ワレンダは5年間、毎日、裏庭に綱を張り、突風の日も横なぐりの雨の日も地道に練習を続け、準備してきたからだ。

 「本番の10倍厳しい状況で練習を積んだ。これなら、当日、サイクロン(低気圧)が来ても、綱から落ちることはないだろうと思った」と、ワレンダは述懐する。

 さらにワレンダは、「人々が最悪の事態に備えて準備しないのを見ると逆にゾッとしてしまう」と言う。

 準備が不十分で本番に臨む人は、意外に多い。準備はもう十分と感じるまで行うだけでなく、そこからさらに時間と労力をかけて準備し、ワレンダのように「サイクロン(低気圧)が来ても、綱から落ちることはない」と思えるレベルに達するまで頑張ってみる。本番の1週間前、フロリダを猛烈なサイクロンが襲ったとき、ワレンダはその中で練習した。その実体験があったからこそ、本番でサイクロンが来ても大丈夫だと思った。つまり、やりすぎと思えるほど、悲観的に準備することが重要だ。