米国ではここ数年、成功を収めるための最も重要な要素として「グリット」が注目を集めている。その意味は、努力・根性・忍耐・情熱。人生で成功するには、IQの高さや天賦の才よりも、グリットのほうが重要であることが、科学的にも裏付けられている。米国でも(日本でも)、かつては、グリットが尊重されていたが、つい最近まで、天賦の才や優れた容姿、富を持った人が称賛され、努力や忍耐は軽んじられる傾向にあった。しかし、その流れが変わりつつあるという。『GRIT 平凡でも一流になれる「やり抜く力」』の共著者のリンダ・キャプラン・セイラー氏に、今なぜグリットが脚光を浴びているのかを聞いた。

(肥田美佐子=NY在住ジャーナリスト)

 グリットは才能やIQなどと違って、生まれながら持っていなくても、誰もが後天的に身に付けるチャンスを平等に持っている。人類の偉大な「イコライザー」、つまり、人間を平等にするものだ。

 誰よりも努力を重ね、誰よりも失敗を恐れなければ、成功する確率は飛躍的に高まる。何かを成し遂げた人に話を聞くと、誰もが、長年にわたって成長を遂げてきた結果だと答えるだろう。彼らと普通の人たちとの違いは、10~20年をかけてやり抜いたかどうかにある。

「才能」と「成功」の関係についての誤解

 『スター・ウォーズ』シリーズのジョージ・ルーカス監督は何年か前、「僕は、大半の人たちがやらないことをやっただけだ。何十年かかろうが、プロジェクトをやり通すグリットがある」と、インタビューに答えている。それができる人はごくわずかだが、グリット、つまり情熱や粘り強さがあれば『スター・ウォーズ』のような作品を創り上げることができる。

 成功するには飛び抜けて高いIQや持って生まれた才能が必要、といった誤解が蔓延している。そうした誤解が原因で、「彼は天才だが、私は違う」とトライすらしない人も少なくない。つまり「現実逃避」だ。しかし、事実は違う。

 地球上には、ノーベル賞受賞も夢ではない子どもたちがごまんといるはずだ。問題は、実際にノーベル賞を取れるだけの情熱とスタミナがあるかどうか。過去のノーベル賞受賞者を見てみると、IQやSATが極めて高い人ばかりではないことに驚かされる。

 グリットを身につけるためには、まず、誰もが可能性を秘めていると認識することが、とても大切だ。

リンダ・キャプラン・セイラー
1997年に広告代理店キャプラン・セイラー・グループをロビン・コヴァルと共同で創業し、CEOに就任。パブリシス・キャプラン・セイラー(現・パブリシス・ニューヨーク)の会長も務めた。コダック・モーメント、アフラックのアヒルのCMなど、有名な広告キャンペーンを数多く手がけ、アメリカの「広告の殿堂」入りを果たす。リンダたちが手掛けたアフラックのアヒルのCMによって、アフラックの知名度は3%から96%に跳ね上がった。現在は、長年続けた広告代理店の仕事から離れ、大学などで主にグリッドに関する講演活動を行っている。最新刊は『GRIT 平凡でも一流になれる「やり抜く力」』(ロビン・コヴァルとの共著、日経BP社)。