私は現在、長年続けた広告代理店の仕事から離れ、大学などで講演活動を行っている。学生にはこんな話をする。

 「親から、どれほど素晴らしい子どもだと思われていようが、関係ない。GPAやSATがどんなに高得点でも、あなたがたは特別な存在なんかじゃない。実社会に出れば、それがよくわかる。もっと頭がいい人や勤勉な人が、たくさんいる」

 そして、こう続ける。

 「仮にあなたが成功できるとしたら、それはグリットのなせる業だ」と。

人間の集中力の持続平均時間は金魚より短い

 第2章「『才能』という神話」で触れているように、グーグルのような企業でも、採用に当たって、人材に求めるものが変わりつつある。どの大学を出たか、場合によっては大卒かどうかさえ見ない企業も増えている。クリエイティブでやる気があっても、大学教育が合わない人たちも数多くいることに気づき始めているからだ。

 変化の速いデジタル時代にあって、グリットは極めて重要な要素になっている。若者たちは毎日、おびただしい量の情報にさらされ、1つのことに集中するのが至難の業になってきている。いわゆる「心ここにあらず」状態である。ギャンブルやドラッグ、アルコールと同様、データストリーミングも依存症を引き起こし、昨日と同じ数のショートメッセージでは飽き足らず、もっともっとと脳が欲するようになる。

 最近の研究によると、人間の集中力の持続平均時間は金魚より短くなっている。金魚の集中力も短く9秒だが、人間は8秒に短縮している(マイクロソフト・カナダの2015年の研究。ちなみに2000年は12秒だった!)。

 石器人は何にも邪魔されず、木の棒をこすり合わせ、気長に火が起こるのを待つことができた。だが、何もかもがエクスポネンシャル(飛躍的)な速度で起こり、脳が追いついていけないほどの情報や知識が世界にあふれる現代こそ、何かをやり抜くにはグリットが必要であることは言うまでもない。

(一部敬称略、次回に続く)

※本原稿は著者の了解を得て、一部、書籍『GRIT』から引用しています。

『GRIT(グリット) 平凡でも一流になれる「やり抜く力」』
(リンダ・キャプラン・セイラー、ロビン・コヴァル著、三木俊哉訳、1620円)

 GRIT(グリット)は、いま米国で最も注目されている「成功のためのキーワード」で、「やり抜く力」を意味します。「真の成功」をつかむための最重要ファクターは、生まれながらの才能やIQではなく、GRIT(グリット)であることが科学的にもわかってきています(むしろ「IQの高い人は、自分を過信し、努力を怠る」)。しかも、GRITの素晴らしいところは、生まれつきのものではなく、学習によって獲得できることです。しかも、年齢は関係ありません。いつでも誰でも、GRITを身につけることができます。本書は、豊富な実例をもとに、GRIT(グリット)の身に付け方を手ほどきします。