佐賀県嬉野市に「肥前吉田焼」(以降、吉田焼)という焼き物があります。有田焼と同様に400年の歴史があります。しかし、一般的な知名度は低く、焼き物業界でもあまり知られていません。佐賀県内でも知る人が限られます。

吉田焼の産地には、かつて約30軒の窯元がありました。しかし現在は8軒(組合加盟の窯元)が残るだけです。産業規模はかつての2割に落ち込み、大変な状況にあります。
有田焼400周年事業に携わった私は、縁あって今度は吉田焼の再生プロジェクトに参画することになりました。取り組んだ課題の一つが、「B品」と呼ばれる規格外品の焼き物でした。
焼き物は、磁器の素材である石や土に含まれる鉄分が焼き上げたとき、黒い点になることがあります。釉(ゆう)薬に含まれる細かいチリが焼けるとき、弾けて表面がへこんでしまうこともあります。割れたり、欠けたりすることも含めると、こうした「B品」は生産量の1割から2割に達します。
黒い点やへこみは器として使う分には問題になりません。しかし、流通に乗せる段階では、規格外品のため正規ルールで売ることができません。このため、せいぜい陶器市でイベント的に投げ売りするしかありませんでした。捨てるにも産業廃棄物の処理費用がかかることもあり、「B品」が倉庫にたまるケースが目立ちます。


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