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 製品はできたものの、マーケティングの4Pのうちプレイス=販売経路には課題がありました。この窯元が作ってきた焼き物は食器のため、百貨店などの食器売場で売られていました。しかし、新しい製品は縁起物であり、むしろ雑貨店やインテリアショップに向いています。ツテをたどって出会ったのが、大阪のある問屋。この分野の経験が長く、社長から「販売員の立場になって、この製品を売りたくなる工夫をしなさい」とアドバイスを受けました。例えば、商品を説明する短い言い回し、ディスプレイに使える小物も一緒に販売するといった売り方です。ホームページの開設、展示会に出展、メディア掲載などの告知も行い、なんとか販売にこぎつけました。

 その効果もあり、長年、赤字が続いてきたこの窯元は、最近では単月の収支で黒字化にこぎつけています。

こだわりをコンセプトにする

 伝統工芸の産地にマーケティングを導入するには、やはりそれまで培ってきたものをどう生かすかが、カギになると実感しています。別の窯元の場合、やはりコンセプトづくりの段階で「うちには何もない」という話が延々半年以上も続きました。

 ここでのブレークスルーのきっかけは「ワクワクするのはどんな時ですか」と尋ねたことでした。経営者は「呉須(焼き物に使われる青色の絵の具のこと)が僕の好きな色に仕上がっていたとき」と答えました。

呉須(青の釉薬)で加飾された器

 呉須とは、古くから磁器に使われている青色の顔料のこと。他の絵の具と違い、素焼きの状態で着色するため、色あせたりしないそうです。 この経営者はとても無口な方ですが、このときにはせきを切ったように呉須について話し始めました。自分の好きな呉須は濃い青色であること。色の調合や焼き加減が難しく下手をすると焦げてしまうことなどを語ってくれました。