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江戸後期から明治初期に作られた有田焼。産地として長い歴史を持つ

 ちょっとしたきっかけで佐賀県の有田焼400年プロジェクトにかかわることになった私はまず、市場縮小にもかかわらず最盛期のままになっていた製造現場を片付けることから始めました。

 現場が片付いたことによって、ようやくブランディングについて考えられる状況になりました。

 まず、マーケティング理論の一つである4P(プロダクト=製品、プライス=価格、プレイス=販売経路、プロモーション=販売促進)をフレームワークとして使い、課題を整理し、戦略を講じることが基本となります。

 私の見たところ、4Pはいずれも課題がありました。例えば価格は、原価計算がされておらず、利益が勘案されていないという課題がありました。販売経路は、消費者に商品がたどり着くまでの経路に複数の企業が介在しているためマージンが高くついてしまうこと、プロモーションについては、自社ホームページや看板などもなく窯元の存在自体が市場から見えていないこと、などがカベになっていました。

 それでも“一番課題があるのは製品だ”と私の目に映りました。

 もちろん有田焼の品質の高さは知られていますし、私もこの点においては信頼を置いています。では、どんな点に課題があるのか。

 それはありきたりな言い方になりますが、伝統産業ならではといえることかもしれません。

 有田に来て気づいたのは、窯元の経営者は幼いころから家業を継ぐ前提にあることです。大廃業時代が近づいているといわれるなか、こうした心構えを持つこと自体は素晴らしいと思います。その一方で、伝統工芸の産地として長い歴史を持つからでしょうか、後継者は先代の経営者がしていたことを「何も変えないで引き継いでいる」ことが少なくない気がしました。

 これは昔からあった製品を「ほぼ変えずに作っている」ということだけではありません。小売店との間に入る商社から言われた商品を「言われるがままに作っている」場合もあります。どちらの場合も、当事者である窯元の経営者に「どんな商品をつくろうか」という発想自体が思いのほか少なかったのです。

 マーケティングを手がけてきた私からすると、「消費者ニーズはほぼ眼中にない」ようにもみえ、なかなか衝撃的でした。市場が維持できているのならばそれでもいいのかも知れませんが、何しろ長い時間をかけてマーケットは8分1に減少しているのです。この状況を変えるためには、これまでのよい部分を残しながら、同時に製品開発に取り組むべきだと考えました。

 製品のマーケティングを進めるにあたっては、ベースとなるコンセプトが必要不可決だと私は考え、これまで実践してきました。