これまたアキオが大好物の茄子も、皮さえ剥いてしまえば、軟らかく、とろっとした食感を楽しめる。皮を剥いた蒸し茄子は細かく切って和風&洋風ドレッシングでサラダに、バンバンジーだれをかければ中華風に。焼き茄子は皮を剥いてムースやすり流し(出し汁を使った和風ポタージュ)、みそ汁の具にも入れた。揚げ茄子は田楽にしたり、マーボーダレをかけて麻婆茄子にした。
汁ものは、かぼちゃや、とうもろこしなどのすり流し、玉ねぎとじゃがいものポタージュ、枝豆のポタージュなど、季節の野菜を取り入れ、とろみのあるスープを作り、季節によっては冷たいスープをアキオに楽しんでもらった。
こうして「アキオごはん」のメニューは一気に増えた。
でも、ミキサーにかけてしまうと、すき焼きも(食べればすき焼きの味がするけれど)見た目には茶色いカタマリになり、おいしそうには見えない。肉料理が好きなアキオに、生姜焼きのようなご飯のおかずになるものを、ソレとわかる見た目で作ってあげたい。
味だけでなく見た目も「お肉」らしく
どうしたら流動状に軟らかくした食材を、立体的に形のある状態にできるだろう?わたしの介護食作りは第2段階に入った。
ある時、軟らかく加工された缶詰の牛肉の大和煮(砂糖と醤油で甘辛く煮たもの)を出してみたところ、アキオは「おいしい」と喜んで食べた。
「そうかあ~、これくらい軟らかいとアキオは食べられるのかあ~」と思った時、頭に浮かんだのが有名なまい泉のとんかつサンドだった。あの軟らかさの秘密は、肉を徹底的に叩いて繊維を断ち切って作っていることにあると、以前、テレビ番組で紹介されていたのを思い出したのだ。
実は我が家には、アキオが病気になる前からの定番料理に「ふわふわ鶏肉団子」というメニューがあった。この鶏肉団子は鶏ひき肉を使っているため、すでに肉の繊維は断ち切られている。そこに大和芋と豆腐を加えて手でコネて、ふわふわな食感の肉団子を作っていた。
「あ、そうか! あの鶏肉団子を丸めずに平らに延ばしたら、薄切り肉のような形を作れるのでは?」
この思いつきから生まれたのが「鶏ひき肉のふわふわシート肉」だ。
シート状の肉ダネを作り、天才と(ダンナに)ホメられた!
手でコネると、ひき肉の粒が残ってしまうので、鶏のひき肉に大和芋と豆腐を加えてミキサーにかける。アキオが食べられるよう、舌でつぶせる軟らかさにするのが目的だが、大和芋と豆腐の配分量によっては大和芋の独特な匂いがキツくなって肉の風味が失われる。配分量を変えては自分で歯を使わずに食べてみて、何回も試行錯誤を繰り返した。
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