本屋さんに行って、不安ますます高まる

 「そうだ、介護食のレシピ本を参考にしよう」

 病院から情報を得られなかったわたしは書店に向かった。最初の書店はそこそこの売り場面積がある大型店。でも「介護」と名のつく料理本はなんと、1冊もなかった。さっきのイヤな予感が頭をよぎる。

 2軒目の、やはり大型書店の医療関係の雑誌などが置いてあるコーナーで、店員さんに脚立で取ってもらわないと取れない位置に、ようやく介護食をテーマにうたったレシピ本が2冊見つかった。介護食が必要な年配者には手が届かないよね。とにかく中を見る。

 「あれ? このご飯、普通に炊いたご飯だ。この本、本当に介護食本?こんなの食べられたら苦労しないわよ!」

 もう1冊を開く。

 「こっちは…、ああこれ、業務用の調理機械で作ってるんだ…。こんなの家で作れるわけないじゃない!」

病状は様々、一人ひとり違うのに

 介護食が必要になるのは、もちろん口腔底がんの人ばかりではない。脳梗塞で口の中が麻痺したり、加齢によって嚥下力(モノを飲み込む力)が低下したりと、様々な理由で普通食とは違う食事が必要になる。

 同様に、その人たちの咀嚼嚥下の状況も、固いものが噛めない、噛めるけれど飲み込めない、あるいは噛むのも飲み込むのもスムーズにできないというように、一人ひとり違う。家庭で作る介護食はそうした一人ひとりの状況に合わせて、家族が料理を工夫して作る。

 知りたいのは、その工夫の方法だ。

 ところが、そもそもどういう状況の人向けの料理なのか書かれている本がなかった。「これだけ要介護の人が増えているんだから、書店に行けば当然、参考になるレシピ本があるよね」と思っていたわたしは、驚きと共に愕然とした。

 ちなみに最近に至るまで、出かけた先で書店があるとのぞいてみたこと十数店。残念ながら店頭で介護食のレシピ本を見つけたことはただの一度もない。

 わたしがアキオの介護食を作り始めた当時、まだネット書店には介護食レシピ本の品ぞろえはほとんどなく、あったとしても中身を確認できないために家族の状況に合う料理が掲載されているのかがわからず買いにくかった。今は品ぞろえは増えた。しかし、内容を確認できるものはやはりまだ少ない。

 つい先日、ネット書店で試しに購入した『5分でできる介護食』という本は、噛む力が弱い人でもちゃんと食べられるレシピが見やすく載っていて、時短調理の工夫もいっぱい。しかも、家族みんなで食べても美味しそうなレシピが多く、ようやく満足できる1冊を入手できた。最初にこの本に出会えていたらどんなに良かったか!

宅配サービスはどうだろう

 介護食をお弁当形式で自宅に宅配してくれるサービスがあることは、退院後の食事について調べている時に知った。そのカタログを見ると、ある程度、噛める人向けの宅配食は、普通のお弁当のように食材の形があり、見た目は普通食とあまり変わらない。

 だが、アキオが食べられる流動食のお弁当は、アキオが「もう食べたくない」と言った病院食と同じように、お弁当容器の中に、見た目に何の食材なのかわからない、いろいろな色の流動状のものが並んでいた。「う~ん、これは期待できそうにない…」。