クリコ:ありがとうございます。夫は本当に、いい人だったんです。だから夫のため、でもあるんですけれど、「おいしい!」と夫が喜んで食べる「おいしい笑顔」を見たかったのは、私で。だから、どうにかしたいと。

 自分で作って、その日の夫の状態に合わせて、お粥の水分量を変えたり。それはやっぱり、家庭料理だからできることで、市販の食品だったら、作り変えるのは難しいですよね。

 例えば家族が今日は熱があるからお粥を作ろう、というのと同じように、今はこういう時だから、こうしようと。

小竹:…愛のチカラですね。食べる人の「おいしい笑顔」。クリコさんは、誰かのために作る料理というのが、すごくモチベーションになっていますよね。実は私もそこは近くて、自分だけだと「何でもいいや」となりがちなんですが、誰かに食べてもらおうと思うと、「頑張ろう」と思えるんです。

 でも、介護食作りは毎日、ずっと続きますよね、一日三食。「今日は面倒くさいな」っていう日はなかったんですか?

ちゃんと太らせることが、生きる糧になる

クリコ:大変ではありましたけれど、介護食作りを面倒だと思うことはありませんでした。とにかく、私が作ったものを食べて、どんどん夫が回復して元気になっていくのが嬉しくて。血色が良くなって、体重が増えて。

 夫が体重計に乗って、1キロ増えた、また2キロ増えたと言って喜ぶ。そういう楽しい毎日というのもあって。

 食べたものが身になっていくと、彼の自信にもなるし、作ったわたしも自信が湧いてくる。ああ、「食べることは生きること」とよく聞くけれど、本当なんだ、こういうことなんだ、と心の底から実感していました。

小竹:ご主人にとっては、太ることが自信になっていた?

クリコ:もの凄く、なっていました。夫は手術の後、7キロも痩せてしまっていたので、「太る=体力がつく」ということだと感じていました。彼が体重計に乗って、増えているとわかるたびに、「クリコ、見て見て!ほら!」「あ、また増えてる!」って(笑)。

小竹:介護というか、ちゃんと太るという感じですね。ちゃんと太らせることが、元気の源になり、生きる糧になる。

クリコ:それには、ただ咽喉を通れば何でもいいというのではなくて、「おいしい!」と喜んで、楽しんで食べてもらうことが大切なんだと思います。

 ああでも、一番頑張らなきゃいけない時期に、無理がたたったのか、わたし自身が一過性の脳梗塞になって、2日間入院したことがありました。今でもあの時、私が入院しなければ、もっとおいしいものを食べさせてあげられたのに、と思います。

小竹:そのままですね、この『希望のごはん』に書かれているクリコさん、そのまま。素敵な奥さんです。