この数年で急激に増えた介護食のレシピ本

小竹:クリコさんが介護を始めた時は、そういうものはなかったんですね。

クリコ:はい。当時は介護食の作り方を相談する先もなくて、最寄りの書店を何軒か探したけれど、介護食のレシピ本も見つけられなくて本当に苦労しました。

 それも、やはり昨年、改めて調べてみたら、書店の大型基幹店には介護食レシピ本があると分かりました。ここ数年で介護食のレシピ本は増えているそうで、医療系のコーナーにずらりと何十冊もあったんです。ビックリしました。

小竹:あるところには、あると。

クリコ:ええ。でも介護食が必要な人とひと口に言っても、口の中の状態や噛める程度、飲み込める程度は人によって違います。だから介護食レシピ本は、中身を確認しなければ買いにくい。家族を自宅に置いて都心の大型書店に出かけて、大量の本を1冊ずつ開いて確認する時間の余裕は、ないと思うんです。

 市販の介護食品も、レシピなどの情報も、入手しやすく改善されてきているのかもしれませんが、まだまだ、本当に必要としている人には届きにくい状況だと思います。

小竹:私がもし介護食を作ることになったら、クリコさんのように頑張れる自信がないんですけれども…。

クリコ:お仕事をしていたら、余計にそうですよね。

頑張れる自信がない人もいる。だからこそ…

小竹:料理が得意、というわけではない人もたくさんいると思うので、助けになる選択肢が少ないのは厳しいですね。

クリコ:私はたまたま料理が好きで、時間もあったので、夫向けの介護食レシピを考案することができました。けれど仕事や子育てと両立している人もいるでしょうし、あるいは私がもっと歳を取って体力がなかったら、できなかっただろうと思います。

 だからこそ、情報、商品、サービスなど、在宅介護を支える仕組みがもっともっと充実して、整ってほしいんです。

小竹:情報だって商品だってサービスだって、全く存在しないわけではない。けれど、本当に必要な家庭には届いていない、という感じでしょうか。

クリコ:介護食の場合、医療機関や介護施設向けの流通が主流なんだと思います。在宅介護は家族任せ、当事者任せという印象があります。

 スーパーやコンビニに、やわらかい食材のお総菜やお弁当を並べてほしいし、介護食作りのベース素材となる野菜のピュレの冷凍食材や、解凍するだけで食べられる冷凍やわらか介護食品もあったら、助かるはずです。レストランでもやわらかメニューが常備されていて…。そんな社会に、一日も早くなってほしいです。

小竹:そうですね。お話を聞くと、まず介護に直面した時は、介護する側が気合いを入れて大きく何かを変えようとするのではなくて、日々の延長線上で、少しずつ介護の現実を受け入れてみる。そうしないと続かないんだろうな、と思いました。

 料理が苦手な人は、市販品やサービスを活用すればいい。そのためには家庭でもっとスムーズに受け入れられる介護食品や、サービスの充実が必要になる。そうでないと持続性のある社会の構築は難しい。きっとそうなんでしょうね。

 私たちクックパッドのミッションは「毎日の料理を楽しみにする」。ここに立ち戻って、改めて私たちの手掛けているサービスの大切さを認識しました。

クリコ:そうですね。健康な人でも介護が必要な人でも、やっぱり毎日の料理が基本で、ベースになるんだと思います。

(後編に続く)