この地味なリハビリをアキオは来る日も来る日も続けた。今日やったからと言って明日効果が出るというものではない。どれくらい続けたら良くなるのかもわからない中で、文句ひとつ言わず、カンシャクを起こすこともなく投げ出すこともなく、黙々とリハビリを続ける姿に、「早く仕事に戻りたい」というアキオの並々ならぬ強い気持ちがヒシヒシと伝わってくる。

 「早く会社行きて~」
 アキオの声が耳に残った。

 仕事と職場の仲間の元に戻りたいと願うこの人を絶対、元気にしてみせる。そのためには食事をしっかり摂らせないと。

「わたしがアキオを復帰させる!」と誓った、が

 実は手術前に、アキオが味覚を失う可能性を医師から告げられていたが、手術後、初めてみそ汁を飲んだアキオは「おいしい」と一言。幸いにも味覚が残っていることが判明した。嬉しかった。

 食べることが大好きなアキオから、食べる喜びは奪われなかった。たとえ麻痺があっても、噛めなくても、アキオが食べられる食事を準備できさえすれば、それを味わうことができる。食べる喜びを通して、彼の回復を支えることができるかもしれない。良かった。心底嬉しかった。

 しかし、アキオの「食べる能力」は大きく損なわれている。
 20倍のお粥すら食べられない彼がおいしく食べられる料理って、どう作ればいいんだろう…。

 料理はある程度知っていても、介護食となると五里霧中。私は、専門家の知恵を借りようとした。そこで、日本の介護食の実情を知ることになる。

(つづく)