実際、流動食って、その名の通り流動状なんですよ。水分をたっぷり含んでいるから、そのままお皿に盛ると、でれーっと流れて広がって、全然おいしそうに見えません。それどころか、何の料理なのかすらわからない。この「でれーっ」を、いかに形のある立体にするか。これが経験したことのない壁でした。

介護食は新しい家庭料理だと気づいたら、心に羽が生えた

 介護食って、作るのが難しそうとか、おいしくなさそうとか否定的なイメージがありますよね。わたしも最初はそう思っていました。

 それでも、見た目もおいしそうで、食べてもおいしい介護食作りは、決して無理なことではなく、やってみたらできることだった。誤嚥(ごえん)や窒息などに注意しながらの食材選びや調理の工夫は必要ですが、それ以外は家庭料理の延長線上にあるものだったんです。しかも、わたし(家族)が食べてもおいしい。

 介護食は新しい家庭料理なんだ、そう気づいた時の衝撃は今でもハッキリ覚えています。心に羽が生えたみたいに軽くなりました。

 食材の選び方や調理の工夫の方法さえ、つかんでしまえば、無理なことではない。
 だとしても、クリコさんのように料理研究家でもなく、ほかに家族がいたら、あんなに手間をかけた介護食作りは難しいですよね。

クリコ:はい、連載でもはっきり書きましたが、わたしが面倒を見る相手はアキオ1人だけで、お勤めもしていませんでした。言い方は変かもしれませんけれど、介護食を作るためには、とても恵まれた環境だったと思います。神様がこのためにいままでの人生をくれたのか、と感じたほど。

中華風鶏粥
炊いたご飯に鶏ひき肉、鶏ガラスープの素と水、ネギとショウガの薬味を加えてゆっくりコトコト煮る。鶏の旨味と薬味の風味がお米の一粒一粒にしみ込んで、いくらでもおかわりしたくなるシンプルなおいしさ

 となると、連載で紹介したような食事を作るのは、自分にはとても無理だと感じている読者の方は多いと思います。

クリコ:そうですね。在宅介護では、介護する側のご家族にはいろいろやることがたくさんあって、本当に忙しいですから。一食一食の介護食作りにそんなに時間はかけられない方は多い、というか、ほとんどだと思います。

 最初にYさんがこの連載について「これが正しい、こうあるべき、というケースの紹介ではなく、ひとつの(ちょっと変わった)例」だと書いてくれましたよね。その通りで、その方によって病状は千差万別、お家の事情もまた千差万別で、だから介護は正解はなくて無数の選択肢がある。いえ、あるべきです。なので、「みなさん、わたしみたいに料理してください! なんて、軽々しく言うことは絶対したくないし、そう主張していると誤解されないように、注意しています。

 選択肢を、見た目や味の方向に広げたい、というのが、言いたいことなんですよね。そういえば、連載中は見出しにまで「バカップル」とか書いて、本当に失礼いたしました。

クリコ:いえいえ、そのとおりですから(笑)。

鉄板メニューが1つあれば、気持ちにゆとりが生まれる

 一方でコメント欄を見ると、ご家族のためにこういう料理を作ってあげたいと考えている方もとてもたくさんいらっしゃるようです。

クリコ:すごくうれしいです。

 クリコさんのサイト(「ひとりひとりの介護ごはん」)や、先々には書籍などの形でも情報提供をされていくと思いますが、なにかひとつ、連載を読んでくださった方にコツを教えていただくとしたら。