介護食と同じように、普通食とは違う日常食に「赤ちゃんの離乳食」があるが、こちらは病院や街中の書店にも「作り方レシピ本」が並び、子育てに不慣れなお母さん同士が交流する場や、「成長に合わせてどう離乳食の作り方を変えていくか」などを専門家に相談できる窓口も、病院や地域の保健所などが設けている場合が多いと聞く。介護食についても病院や地域などの身近な場所に専門の相談窓口があれば、どれほど助かるだろう。

たくさんの選択肢があれば、ゆとりを持てた

 食べる人の状態に合った介護食の作り方や注意点などの情報、困ったときに助けになるおいしくて栄養価の高い市販の介護食品、手に取って内容を確認できるレシピ本などなど、わたしが一人で試行錯誤しなくてはならない状況になる前に、こうした助けになる情報や選択肢が、あの当時のわたしの身近にあったら、どれほど救われただろう、ゆとりを持てただろうと思う。今ならわかる。「ゆとり」こそ、あの時、一番わたしが欲しかったものだと。

人参のポタージュ
冷凍野菜ピュレCubeとして常備保存してある人参のピュレCubeをコンソメの素と水とともに鍋で煮て、生クリームでコクをプラス。たったの10分で、彩りも鮮やかな人参のポタージュの完成

 わたしがキッチンにいる間、アキオはいつも独りだった。ゆとりさえあれば、アキオの病気で沈んだ気持ちと、弱った体力の回復にもっと心を配れただろう。もっとアキオと一緒に笑顔で過ごす時間を持てたはずだ(涙)。

 一日中キッチンで孤独な闘いを続けていたわたしは、自分だけが社会から取り残されているような気持ちになっていたが、わたしと同じように、怒りや不満を感じている人たちは、きっと少なからずいるはずだ。その方たちは、その怒りをどこにぶつけたらいいのかわからずに、今もフツフツと怒りの熱が冷めないまま過ごしているのかもしれない。

 今回、調べてみて、依然として変わらず満足できないこともあったが、介護食レシピ本は「あるところにはあり、図書館でも借りられる」ことがわかった。では、2012年当時のアキオとわたしが、この2017年にワープしたとしたら、わたしは苦労なく初めての介護食作りができただろうかと考えると、答えは「断然、NO!」だ。まだまだ、全然、情報と選択肢が足りないと感じている。

 「おいしく食べることで元気を、生きる力を取り戻してほしい」、そんな思いで家庭での介護食作りに取り組んでいる皆さんに、助けになる情報や商品、サポートが広く(ネットをうまく使いこなせない方にも)しっかり届くような社会の仕組みが整ってほしいと願ってやみません。

クリコの考える、理想の介護食未来予想図

その1:スーパーには「やわらか弁当」「やわらか惣菜」が並ぶ

 普通食の弁当や総菜の隣に、「やわらか」「超やわらか」シールが貼られた介護食のお弁当と、おかずパック売りや量り売りの介護食惣菜が数種類あり、日替わりで品ぞろえが変わる。

その2:コンビニには「冷凍の介護食食材」「冷凍の介護食弁当」も

 いろいろな野菜の「冷凍野菜ピュレCube(こちら)」と、鶏・豚・牛豚の「やわらかシート肉」が冷凍コーナーに。もちろん、どちらもレシピ付き!スーパー同様、やわらかい介護食のお弁当やお惣菜が買えるほか、電子レンジ で温めるだけで食べられる介護食の冷凍弁当など品揃えも豊富だ。

その3:レストランでは「やわらかメニュー」が食べられる

 「やわらか」メニューがあり、「やわらか」「超やわらか」「極やわらか」を選べる。もちろん流動状の「極やわらか」も、しっかり立体的になっていて「おいしそうな見た目」が食欲をそそる。

 いまは荒唐無稽に思われるかもしれないが、「やわらか弁当」や「やわらか惣菜」が近所のスーパーに並ぶ様子を想像してみてほしい。私たち自身の未来が、少し明るく見えはしないだろうか。

 わたしはこの未来予想図が、そう遠くない未来に実現するのだと信じています。

 幸いにも、アキオはわたしが作った介護食を食べ、体重が7キロ増えて元通りになり、体力を回復させることができた。その後の検査で、食道がんが初期のまま進行していないことがわかり、内視鏡手術を受けられると診断された時は、わたしは足の力が抜け、病院の床にへたり込んで、声を殺して大泣きした。

 口腔底がんの手術の後、食道がん内視鏡手術も無事に成功して、その後、4か月ぶりにアキオはついに職場に復帰したのだった。

(つづきます)