だが、今も、ネット書店で家族の状態に合う介護食本を見つけるのは難しい。掲載されている料理の数がどれほど多くても、その食材の形状(固形物なのか流動状なのか、粒の大きさや軟らかさはどのくらいなのか)によっては、家族の状態に合わずに、「これでは噛めない、飲み込めない」場合があるからだ。ネット書店でも、すべての介護食レシピ本の目次や内容を購入前に十分確認できるよう、工夫を試みてほしい。

 今回、書店も改めて何軒か訪ねたが、中小規模の書店では、やはり介護食レシピ本は1冊も見つけられなかった。「やっぱり今も無い。なぜ!?」

 …いや、もしかしたら、大型の旗艦店になら置いているかも? 予感は的中、都心の複数の大型書店をのぞいてみると、なんと各店共に、医療本コーナーの棚の一角に「介護食本」がまとめて置かれていた。しかも、多い店には54冊もの介護食レシピ本が! これには心底、驚いた。あるところにはあるんだ!

 ある旗艦店の品揃え担当者に話を聞いたところ、「ここ1年半ほどで介護食レシピ本はぐっと増えてきている。だが、売り場面積が小さい中小規模の書店では、回転率を重視してたくさん売れる本を優先するため、現在も介護食レシピ本を置いていない店は多い」という。

 わたしは、ズラリと並んだ介護食レシピ本を1冊ずつ手に取り、パラパラと中身を確認した。ああ、何という情報量だろう。ああ、コレ! これならアキオも食べられたかも。わたしが、アキオを早く回復させたくて、でもどうやったらアキオの口に合うものを作れるのかわからなくて追い詰められていた、あの時に、この本に出合えていたら…。

 この時の気持ちは、うまく言葉にできない。とても残念で、とても悔しくて、胸が苦しくなって、涙が込み上げてきそうだった。

枝豆とうふの粒ウニ添え
絹ごし豆腐に冷凍しておいた茹で枝豆とゼリー化パウダー(介護食用ゲル化剤)を混ぜてミキサーにかければ、たったの3分で枝豆風味の寄せ豆腐の完成。ウニや粒ウニ(瓶詰め)が味のアクセントに

 と同時に、いまこれらの介護食レシピ本を切実に必要としている人たちに、「ここにあるよ!」という情報は伝わっているのだろうかという懸念が沸き起こる。さらに、大量のレシピ本を前にしてみると今度は、このたくさんの介護食レシピ本の中から、どうやって家族の状態に合うものを選べばいいのかという戸惑いも生まれた。レシピ本は意外と高額だ。1冊2000円台のものもある。介護する家族は忙しい。書店でじっくり検討する時間もなく、試しに買ってはみたものの、よくよく読んだら家族の状態に合わないレシピばかりだった、というのでは悲しい。

 そうか、それなら近所の図書館だ!

 介護する家族は忙しい上に、自宅に要介護者を残して遠出はしにくい。最寄りの図書館で介護食レシピ本を借りられるなら、内容を確認して家族の状態に合わなければ返却できる。手元に置きたい場合は、ネット書店で購入すればいい。

 今回、調べてみて日本全国6000以上の公共図書館の蔵書検索ができる「カーリル」というサイトと出合った。住んでいる都道府県名を指定して「介護食 レシピ」で検索すると、自宅近所の図書館の介護食に関する本の蔵書状況がわかる。知らなかった、こんなサイトがあったんだ! 試しに東京都目黒区で調べると区内図書館全館で33冊の介護食本があり、愛知県豊田市には34冊あるという具合。さらに最寄りの図書館を指定して検索できる。あるのか無いのかわからずに、むやみに書店を巡るより「そこに行けば確実にある」と分かるだけで心強い。

●図書館検索「カーリル」はこちら

介護食の相談窓口はどこにある?

 介護食作りはまず、食材を噛みやすく飲み込みやすくすることから始まるが、食材を軟らかくするために、ただ長い時間茹でて、細かく刻みさえすればいいのかと言うと、実はそう簡単なことでもない。実際にやってみると、どのくらい茹でたらいいのか、どのくらい細かく刻めばいいのかわからずに戸惑う。ちょうどよい軟らかさ・細かさは食べる人の状態やその日の体調によっても違う。また食材が違えば、道具も変わってくる。芋類は茹でてつぶす、葉モノ野菜は茹でてミキサーにかける、という具合だ。

 介護食ならではの注意点もある。例えば、ほうれん草のお浸しを作るなら、ほうれん草を普通よりも長く茹でて、細かく刻んでから、とろみをつける。とろみをつけないと、細かく刻んだ食材が口の中でバラけて、誤って肺に入ってしまう誤嚥(ごえん)を引き起こしやすいからだ。普通、とろみをつける時には片栗粉を使うが、時間も手間もかかる。介護食作りには「とろみ剤(介護食用)」が欠かせない。こうした介護食作りならではのノウハウや注意点は、普通に家庭料理を作っているだけでは知り得ない。