市販品は依然、流通量が少なく入手しにくい

 あらかじめ軟らかく調理され、レトルト状で、温めてそのまま食卓に出せる市販の介護食品。わたしが介護食を作り始めた当時は、日本介護食品協議会規格の「ユニバーサルデザインフード」と、消費者庁規格の「えんげ困難者用食品」という市販品があった。

 でも、(少し前の資料ですが)農林水産省食料産業局の「介護食品をめぐる事情について(平成25年2月)」によると、市販介護食品の8割が介護施設や病院などの業務用に使われ、一般の家庭向けの流通量は残りの2割。しかもその2割のほとんどが通信販売用で、店頭売りされているものはごくわずか。当時は購入したくても身近な店で商品を見つけるのが難しい状況だった。

豚のシート肉のオイスター丼
こちらはクリコさんの介護食メニュー。豚のひき肉に大和芋と豆腐などを加えてミキサーにかけ、薄くシート状に延ばした「ふわふわ豚シート肉」をオイスターソースのタレで煮からめて、米の倍量の水で炊いた軟飯に載せれば、豚のオイスター丼の完成

 その後、平成27年に農林水産省規格の「スマイルケア食」が製造業者に向けてガイドラインを策定し、参入業者を募り始めた。

 すごい!「お国お墨付き」の介護食品が動き出した。複数の規格があることで競争が生まれ、より良い介護食品が作られ、普及も加速するだろう、介護食を取り巻く環境はガラリと変わるに違いない。と、わたしの胸は期待で高鳴った。

 だが今回、自宅近所のスーパーマーケットとドラッグストア20店舗に介護食品の取り扱いについて電話で確認したが、「店頭にある」と回答したのは隣の区の3店舗のみ。ネット通販でも購入できるが、5個セット、12個セットとセット販売も多い。味を確認せずにたくさん買うことには不安があり、送料もかかる。残念ながら現在も、身近な店で市販の介護食品を入手しにくいという状況は変わっていない。近所で手軽に買えるようになってほしい。

そして、何よりも問題なのは味

 アキオが最も食べることが困難だった時期、1日3食のすべての食材をミキサーにかけるのは、とにかく時間がかかって大変だったため、市販の介護食品に助けを求めたことがある。だが、うかつにも味見をせずに食卓に出してしまい、アキオはそれを口に入れた途端、顔をゆがめて凍りついた。マズかったのだ!

 「あっ、アキオごめん! 飲み込まなくていいよ」

 と、吐き出させようとしたが、アキオは下あごが麻痺しているため、すぐには吐き出すことができず、ぎゅっと目をつぶってずっと耐えていた(今でもその様子を思い出すと胸が痛くなる)。

 素材を茹でてミキサーにかけるだけでできる食品なのに、一体どうしたらこんなにひどい味になるのか、怒りが猛然と沸き起こった。

 すり潰したり、ミキサーにかけたりという介護食作りは手間がかかり、時間が飛ぶように消えていく。おいしくてバリエーション豊かな介護食品が、近くのスーパーなどで手に入るなら、家庭での介護食作りは劇的に楽になる。市販介護食品は本来、心強い助っ人となるはずなのだ。

改めて試食してみたら、味の合格点は半数以下

 今回、改めてレトルトの市販介護食品14種類を購入。料理は得意ではないという友人を誘って一緒に試食してみた。