かぼちゃのピュレCubeは介護食では大活躍する。冷凍ピュレCubeをレンジで解凍して柚子ジャムを混ぜたら「柚子風味和菓子」に。出し汁と醤油などの調味料を混ぜるだけで「かぼちゃの煮物」になると気付いた時は、自分でも大発見したような気分になった。さらに、出し汁やスープを足せばすり流し(和風ポタージュ)やポタージュスープが簡単にでき、チーズをのせて焼けば、かぼちゃのグラタンにもなる。かぼちゃピュレ、凄い! えらい!

 アキオが好きなスクランブルエッグにも、ソーセージのピュレを足して作るだけでコクが出ておいしくなる。さらに、野菜のポタージュを作る場合、普通なら小一時間はかかるところ、この冷凍野菜ピュレCubeを使えば、なんと! 10分で作れてしまうのだ。

 介護食作りで毎日毎食、最も時間がかかって最も面倒な「ミキサーにかける」工程を省略できる。これが一番ありがたかった。毎食の調理時間に余裕が生まれて、気持ちにも大きなゆとりが持てるようになった。

それでも、流動食で太らせるのは大変だ

 毎日の介護食作りが俄然楽しくなったわたしの次の課題は、アキオの体重を元に戻すことだった。

 アキオは手術前よりも体重が7キロも減ってしまっていた。何とか元の体重に戻したい。でも、前回お話ししたように、流動食は基本、普通の食事よりも水分を増やすことで軟らかさを実現しているため、同じお茶碗一杯の分量でも、普通食よりもカロリーは低くなる。例えば、100gのご飯のカロリーは168kcalだが、100gの全粥は71kcalと半分以下だ。

 その上、食べるのに時間がかかり、途中で疲れるか、食べるのに飽きてしまい、大量には食べられない。アキオを太らせるのは大変なのだ。そして、思いついたのはデザートだった。当時のわたしの日記には「カロリー稼ぎで毎食、チカラ技のデザート付き!」と書かれている。

 果物が大好きなアキオのために、フルーツのデザートをいくつも考えた。旬のフルーツをミキサーにかけて、生クリームを加え、とろみをつけてフルーツムースに。フルーツを変えれば、いろいろなムースを作れる。

 この「とろみ」をつけるのに役立ったのがゼリー化パウダー(介護食用のゲル化剤)だ。普通はゼラチンを使ってゼリーを作ると固まるまでに冷蔵庫で2時間以上かかるところ、このゼリー化パウダーを使うとなんと3分でできる(!)。これがあったからこそ、毎食必ずデザートを用意できた(しかも、このゼリー化パウダーはデザートだけでなく、とろみをつける多くの料理に活用できる)。

 ほかにも、市販のプリンの素を使ったかぼちゃのプリンや、お麩を使った甘くてふわふわのフレンチトースト、カステラを使ったしっとりティラミスなど、3食必ずデザートを添えることで食卓も華やぎ、食後の楽しみができる。アキオも毎回、「今日のデザートは何?」と喜んでいた。しめしめ、狙い通り♪

ゼリー化パウダーで5分で作ったイチゴのムースとゼリー

 体重増を支えたものはほかにもある。口腔リハビリだ。

 モノを噛む、飲み込むのに必要な、口の中や首周り・肩周辺の筋肉を鍛える体操、声を出して話すことで舌と唇を鍛える構音訓練など、アキオはこうした訓練を毎日、1日3回、朝昼晩と1回40分かけて行っていた。簡単で地味なトレーニングだったが、担当の言語聴覚士の先生のやさしく親身な指導のおかげで、退院後も楽しくリハビリを続けられ、噛む力、話す力は確実に快復していった。今も、深く感謝している。