駒村:残念!

クリコ:料理の楽しさに目覚めたかなと思ったんですけどね。だから、私が介護される立場になっていたら、きっと市販のレトルトの介護食品が並ぶんだろうなと。

駒村:そんなことはないと思います。絶対違いますね。

クリコ:できないものはできないでしょう、みたいに開き直るんじゃないかな。

駒村:いや、絶対「これはどうかな、ここはどう? どう直せばいい?」とクリコさんに聞きながら、日々、改善されていくんだと思いますよ。

大変だけど、母のことはどんどん好きになっている

もしくは会社の後輩を連れてくるとかですよ。「お前、料理しろ」と。

クリコ:うん、何か知恵は使ったでしょうね。「どうしたらいいだろう」と。みんなの助けを借りるのが上手な人だったから、したかもしれないですね。そういえば、人の助けを借りるのが上手な人でしたね。彼が亡くなった後、彼の幼なじみとか、小中高、大学と、そのお友達たち、あと同僚の皆さんに助けていただいていて。

 今は1人になったわけですけれど、日々、アキオという人の名前が私のそばから途絶えることがないんですよ。誰かと彼の会話をしている。だから、何か彼がやっぱりまだずっといるという感じがしています。寂しいけれども乗り越えられてきているのは、そういう人たちのおかげだなと。

駒村:なるほど。

クリコ:そして毎朝、NHKの「あさイチ」を見て、料理コーナーでイノッチ(井ノ原快彦)さんと駒村さんの掛け合いを見て、元気に、幸せになれるんですよ。

駒村:うれしいです。ちゃんとしているように見えるのは、15分だけしかないですけど。あとはもうひどいものですけど。

クリコ:平日は毎日出演されていて、でもお母様の介護もされて、すごく大変だろうなと思うのですが、どうですか。

駒村:大変と言えば、大変ですね。今、一番大変かもしれないですね。ですけど、どんどん母のことが好きになるんですよね。なぜなのかは分からない。不思議なんですけど、何でしょうね。

介護をしているお母様のことを好きになる。

駒村:そうなんです。だからやらざるを得ないな、と思うというか。

クリコ:分かります。なぜでしょうね。私の場合、アキオは最強の夫だった。あまり病気しない人だったのでかえって不摂生で、お酒もたくさん飲むし、たばこもすごいし、病気になっても当然みたいな人ではあったんだけど、体も強かったし、魂も強いところがあって、私はそれに頼り切っているところがあった。

 その彼が急に倒れて、「ここは私がとにかく支えなきゃ」となったときに、何か今まで以上にすごく大切な存在になって、今まで以上に好きになったんですよね。

駒村:すごく分かるような気がする。何だろう。

クリコ:何でしょうね。

駒村:すごく大変なんですよね、こっちは。大変だよ、まったく、とは思うんですけど。

クリコ:精神的にも物理的にも大変ですよね。でも、好きになっていくって何か分かります。

きりがないんですよ…

駒村:本質が見えてくるんですよね。何となく。で、ああ、この人が母親でよかったなと思う瞬間もあったりして。「この人に、こういうところがあったんだ」と思うと、色々な機能を失っても誰に対しても分け隔てなく優しい姿に出会ったりすると、人として、この人と関われてよかったなと思ったり、うーん、上手く言えません。不思議なんですよね。

クリコ:でも、やっぱりそういうふうに思ってもらえるお母様も幸せですよね。

駒村:いや、でもご主人もそうですよね。

クリコ:主人は、アキオはどうかな。私はどうだったかな。精いっぱいやったんだけど、あのとき、あれをしてあげられたらとか、あんなこと言わなければよかったなとか、あれを食べさせてあげたかったな、とか…。

駒村:それは、すごくある。きりがないんですよね。

クリコ:ないんですよ。

駒村:これはもう、きりがないんですよね。

クリコ:そう、ない。ないんですよね。