クリコ:かっこいいですね。お話を聞いただけで、好きになる。

駒村:でも、普段は本当にただの酔っぱらいなんですけどね。

クリコ:かわいい。

駒村:アキオさんは、結構職場では無頼派だったんですか。

クリコ:そうみたいです。家では荒っぽい言葉とかも使わないし、すごくソフトで、とにかく本を読んで、読んでいるときだけ静かで、あとは陽気にしゃべっている。穏やかで、まあ、ちょっと手は掛かるけど、かわいい。ちゃんとすぐ謝るし、謝れと言ったら謝るし。

駒村:すごくかわいい。

クリコ:でも、さっきも言いましたけど職場では全然違っていたみたいで、この連載と書籍の仕事で、皆さんの話を聞いて本当にびっくりしました。

駒村:職場復帰の話が描かれていたので、すごく職場の方々の理解があって、アキオさんの人となりだからだろうなとも思いながら読ませていただいたんです。

クリコ:本当にいい職場で、同僚であり、仲間で友達という感じの雰囲気があって、職場に恵まれているんだなと思って。だから、アキオはいつも幸せそうなんですよ。会社へ行くときも幸せそう、帰ってくるときも陽気に帰ってくるし、会社大好きだったんですよね。

駒村:それはアキオさんに、明確な目標があったからじゃないですか。それが、とても、何と言うか、生きる上でとてもプラスだったと思うんですよね。クリコさんの支えがあって、何て幸せな晩年、というか…こんなに幸せな環境で介護を受ける方って、そうそういないだろうなというふうに思いながら。

クリコ:でも、介護をできたのが私はすごく幸せだったんですよ。私はこのときのためにあったんだなと。

駒村:すごく分かる気がします。

倒れたのが私だったらどうなったかな?

クリコ:そうなんですよ。身の回りの世話から何から全部、彼がいつもは頼りない私に全部委ねてくれて、全部させてくれたのが、やっぱり家族なんだなと思えて、介護というか、看病できたのがすごく幸せでした。本当によかったと思って、うれしかったです。逆だったら大変だと思って、主人は料理ができないので(笑)。

駒村:いや、一から覚えてやるかもしれないですよ。

クリコ:1回、私が背骨を骨折したことがあって、リハビリ期間の4カ月の間、アキオが毎朝、ベーコンエッグを作ってくれたんですよ。それが初めての料理でしたね。もう最初は下手で、全部焦げ焦げだったのが、毎日毎日作ると少しずつ上手になるじゃないですか。

駒村:うん、うん。

クリコ:そうしたら、あるとき、二つ作る目玉焼きの片方を失敗して、片方がすごく上手にできたんですよ。で、すっと上手にできた方を私に差し出したんです。「やっと料理をする人の気持ちがこの人に分かったかな」と思った瞬間でした。

駒村:ああ、料理は人のために作るからおいしい。

クリコ:まさにそういうことで、喜んでもらいたいじゃないですか、料理を作る側って。だから、彼は私に喜んでもらいたくて、失敗した方じゃなくて、明らかに大成功な方を出した。これから、こんな日が続くんだなと思ったら、骨折が治った途端に料理をやめたので、な~んだ、と(笑)。