駒村:知らず知らずのうちにやっていたことが、実は誤嚥リスクにつながっていることもあるので、その辺の情報をしっかりと精査して得ていくということが、これから在宅介護にとってはとても大事なことだと思いました。食事の喜びを大事にしていくためにも、ですね。

クリコ:この間、小学校2年生の脳性まひのお子さんがいらっしゃるお母様にうちの料理教室に来ていただいたんですね。そのときにそのお母様がおっしゃるには、病院の先生には、誤嚥する可能性があるので、基本的に流動食以外はだめ、と言われるんですって。

駒村:そうなんですよね。

クリコ:「でも、この子はお兄ちゃんが食べているものを見て、それを食べたいと言うんです。この子もだんだん大きくなってきて、ミキサーにかけるとおいしくないというのが分かっている。家族と同じものを一緒に食べたいんです。だから今日、習いに来ました」と、涙ながらにおっしゃって。

 「食べていいですよ」とは私の口からは、もちろん無責任に言えないことです。なので、「分かります」としか申し上げられなかったのですが。私も、噛む力を失った主人が手術を受けるために、体重を増やさなくてはならなくて、ちょっと無理して、短期間で体重が増えるように力業的なことをやったんですけれど、もしかしたら、病院の先生に指示を仰いでいたら、これはだめです、あれはだめですという制約があったかもしれないです。そのときは指導を受けることもできなくて、仕方がなく私が食べさせました。

駒村:分かります。本当に分かります。

食べたいという気持ち

クリコ:お子さんが笑いながらおいしそうに食べている姿を見ると、食べさせてあげたいなとやっぱり思いますよね。だから、誤嚥を避ける料理の作り方、食べさせ方を、広めていくことがすごく大事だと思います。

駒村:私もこの間、「母にはまだ食べる力が残っているから食べさせたい」と病院で言ったら、「お嬢さんが来て食べさせるんだったらいいですよ」と許可をもらいまして。もちろん、それは、家族としてある意味覚悟しながらやるしかないんです。けれど、それによって話す力が回復してきたんですよ。リスクはあるけれども、そこを見極めながら努力をしていくと報われることもあるなという気はしているんです。あくまで、個人的には、ですけれど。

クリコ:分かります。危険だからといって、その機能を使わないままでいくと、どんどん衰えていくし、知り合いのお母様が、デイサービスで流動食ばっかり食べさせられて、「炊いたご飯を食べられた人なのに、家に帰ってから食べられなくなっちゃった」という話もあります。使わないとやっぱり衰えるんですよね。

駒村:そう、早いんです。1週間も使わなければすぐ落ちていくんですよ。せっかく口からの食事に慣れても、手術があって食べられなくなったら、また…。これは日々、戦いですよね。嚥下障害を持つ可能性がある病気の方、介護される方は、そこは絶対にせめぎ合いになると覚悟された方がいいと思います。

クリコ:あとはお母様の食べたいという気持ちですよね。

駒村:そう、水が飲みたい、とか言うんですよね。「飲ませてあげたいけれど、だめと言われているんだよね、今…」と答えるしかなかったり。

クリコ:それはとろみを付けてもだめなんですか。

駒村:だめと言われていましたね。だから、ゼリーはいいと言っていた時期はゼリーを食べさせたりとか。

クリコ:お水はね…、私も主人が手術で水分を取れない時期があって、やっぱりものすごくつらかったみたいで、術後1か月ぐらいしてからかな、飲んでいいですよと言われて、やっとお水を飲んだ、その次に「なっちゃんを買ってきて」と言うので、「なっちゃんって何?」と聞いたら、たどたどしく「なっちゃん、知らないの?、自動販売機に売っているオレンジジュース」としゃべって。慌ててなっちゃんを買ってきて、一口飲んだら、「なっちゃん、最高」と(笑)。

アキオさん、酔っ払い武勇伝

駒村:あはは、この本を拝読して、本当にご主人はかわいらしい方だなと思いました。すごくかわいいですよね。

クリコ:編集の方からは、ものすごく反感を買ったんですけど。

いえ、反感じゃないですよ、あきれかえっていただけで。

希望のごはん 夫の闘病を支えたおいしい介護食ストーリー』(クリコさんとアキオさんのバカップル話も満載です…)

クリコ:書かせていただいたとおり、大好きだったんですけれど、一方では本当に世話が焼ける人で、時々べろべろに酔っぱらって帰ってくるんですよ。そうすると、どこかで必ず転んでいるんです、酔っぱらって。眼鏡がひしゃげていて。眼鏡をいくつ壊したか分からないですよ。酔っぱらっているから痛くないんですよね。ご機嫌で帰ってくる。後輩の方に聞いたら「居酒屋の小上がりで靴も履かせて、タクシーに乗せるまで付いていったことが、何度もあります」と。

駒村:おーっ。