(前編はこちら)
誤嚥の怖さから、図表には力を入れました!
駒村:私も自宅で母親を介護して、食事も作ったりするのですが、『希望のごはん』を読んで、改めて感じたのは、介護される側の状態が変わってくると、作る料理も変えなくてはならないこと。これの見極めがやっぱり大変ですよね。
クリコ:そうですよね。おうちで作るときに、そこまで普通は考えませんよね。でも、やっぱり誤嚥(ごえん)の問題などもあるので、確かに危険でもあるから、それはやっぱり分かった上で作らないといけないのに、意外と知られてないですよね。
駒村:最近はずいぶん「誤嚥」ということが話題になっていますけれど。
クリコ:私が6年前に介護食を作り始めたときって、ぜんぜん知られていなくて、主人の料理を作るときに何か参考になる情報はないかなと思って、ある病院のサイトでこの言葉を知って、「つるつる滑るものとか、刻んだものが誤嚥につながって、すごく危ない」というのを初めて知って、えーっ、そういう料理これまで作って食べさせちゃった! と思って、すごくどっきりして、何でこれを病院の先生は教えてくれなかったんだろうと思いました。
駒村:だから、この本にはレシピとは別に、「噛む、飲み込む力に合わせた食べやすい食品の形状と状態」の表や写真があるんですね。
クリコ:はい、ここはもうこだわって分かりやすく作りました!
駒村:思うのですが、誤嚥の危険を軽視してはいけない一方で、その逆のパターンもあって。「誤嚥のリスクがあるから、食べることはやめましょう」という。
クリコ:ああ。
駒村:患者の側としては、飲み込める力がまだ残っているから、それは生かしていきたい。生かしていきたいんだけれども、「誤嚥して肺炎になって、死んじゃったらどうするんですか」と言われたら、あきらめざるを得なくて、その辺のせめぎ合いも実はすごくあって。
クリコ:すごくよく分かります。
駒村:それで、実は私、嚥下(えんげ)のセミナーに行ったんですよ。ついこの間なんですけど、「口から食べる」ということにこだわっている団体があって、そこのセミナーに行ってきたんですけど、スプーンを入れるテクニックで全然違うんですよ、飲み込み具合が。
クリコ:おおっ!
目から鱗の、誤嚥を避ける食べさせ方
駒村:例えば、舌でつぶせるぐらいの堅さのソフト食だったとしますよね。ただそれをざくっと取ると、スプーン山盛りになっちゃう。だけど、薄くスライスして取って、スプーンの背をなるべく舌の中央に載せる。そうすると、唇や舌の動きの悪い人は飲み込みやすくなる。同じ食べ物でも食べさせ方でリスクが減らせる。これは目からうろこだ! と思いました。
クリコ:聞きたかったんです、そういう目からうろこ情報!
駒村:これは、摂食えん下障害を持つ患者さんの食べる力を回復させようとしている看護師の、小山珠美さんという方がやってらっしゃるんです。例えば、ご飯とおかずを食べるとき、普通、私たちは、ご飯にめんたいこをよく混ぜて食べると、味が混じっておいしいわと思いますよね。
なので、私は母の介護で、ソフト食でもおかずとご飯を混ぜて食べさせていたんですけど、実は、ごはんとおかずのブロックが複数にばらけていることによって、1つは食道に、1つは気道に行ってしまうというリスクがある。咀嚼力があって口の中でひとまとめにできる人はごはんとおかずを同時にいれてもかまわないんですけれど、それが困難な人は1品ずつ食べてもらう方が安全なんですって。
それが例えゼリー1種類でも、クラッシュにしたものはまとまりがなく、ばらつきが強いので、実際に造影剤で見ると、口やのどでばらけてしまって、それらが食道と気管の両方に入って誤嚥を引き起こすリスクが高まるんです。
クリコ:なるほど。
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