クリコ:でも、プロの先生のレシピを教えていただいて、いい先生に教えてもらうって…いいですよね。

駒村:そうですね。なかなか聞けないことが直接聞けるチャンスがある。オンエアのためではあるんですけれども、でもそれが蓄積されていくと、別の先生で同じような作業があったときに、「この先生とこの先生は、同じ目的のために別の方法を採っている。何でだろうか」みたいな疑問が起きてくるので、それを考えたり、オンエアで質問してみたり、どんどん行動していける感じがあって。

クリコ:例えば和食とフレンチじゃ、食材を柔らかくするテクニックとかでも違うじゃないですか。理論的にも全然違うし。

駒村:私、最初は、「塩少々」もどのくらいなのか分からなかったですよ。ちゃんと決まっているんですよね。番組で先生によくお尋ねするのは、「どのくらい炒めますか問題」かな。

クリコ:あっ、よく聞かれていますよね

駒村:なぜかというと、炒め終わる前に差し替え(完成した状態)に飛ぶ事が多いので(笑)。途中を飛ばすに当たって、目安をちゃんと言わないと、視聴者の方に伝わらないので、「しっかり汁気が飛ぶまで」とか、「この具材はこのぐらいまででいいよ、また後でいためるので」とか、「お弁当用だから全部汁気を飛ばしてください、だけど今、食べるんだったら、汁気が残っていてもいいですよ」という場合もあるし、さまざまなパターンがあるので。

クリコ:なるほど!

駒村:そこは、先生によってすごく違うので、注意してうかがっています。

クリコ:私も似た経験がありますね。料理教室にみえる生徒さんって、「その日に習って、その日に作る」という方はめったにいないんです。お仕事をされている方が多いので、1週間後とか、1カ月後とかになる。そうすると忘れちゃうんですよね。なので、レシピを作る時一番注意しているのは、いつ見ても読んだ通りに作れば再現できる、ということを心掛けてます。おっしゃるとおり、「炒める」というところは、どういう状態になるまでなのか、分かるように書くようにしています。

駒村:そうなんですよね。こういうニュアンスはテレビでも意外と伝わりづらいところもあるので、出来るだけ口頭で具体的な目安を言うようにしています。「中火で何分」いう火力と時間、音の変化、見た目の色とか縮み具合とかですね。だけどやっぱり分厚いものは最終的には竹ぐし。

クリコ:竹ぐし、重要ですね。

駒村:たぶん、テレビという触ることができないメディアだからこその細かさかもしれないですけど。

料理は、感覚じゃなくてロジック

クリコ:料理教室でも結構、「えーっ、そんな細かいこと?」というようなことを聞かれるんですよ。でも、分からなければ不安ですよね。だから何を聞かれてもいいように、自分でも下調べしておいて、積み重ねていきました。

駒村:先生によっては「なぜか、昔からこうする方が良いの!」と、貫禄で言い切る方もいらっしゃりそうですけど(笑)。

クリコ:残念ながら貫禄不足で(笑)。でも、料理って、感覚のようで実ははっきりしたロジックがあるじゃないですか。

 例えば煮物を作るときに、お砂糖が先で、おしょうゆが後。知らないときはなんとなく「そういうものなのよ」と思って、とにかくこういうことなの、と教えようと思っていたんですけれど、ちゃんとそれには理由があるというのが分かって。

クリコ:おしょうゆを先に入れると、塩分が材料の組織を引き締めて、後から入れたお砂糖の甘みが浸透しにくいんです。逆に、お砂糖を先に入れると、材料の組織も柔らかくなって、次に加えるおしょうゆが中まで染み込んで美味しい煮物に仕上がるんです。こんなふうに調べて教えると、生徒さんもすごく納得してくれて、自分でもやっぱり調べて勉強になりました。

駒村:ああ、『希望のごはん』も、例えば誤嚥を避ける理由や方法論、おいしい食べ物がおいしそうに見せる理由などを、丁寧に説明されてますよね。

クリコ:担当した編集者さんが料理をされない男性の方だったので、できれば彼にも分かるように、と(笑)。

駒村:ああ、なるほど(笑)大事!

(後編に続きます)