Jリーグでは2007年から「イレブンミリオンプロジェクト」を掲げ、2009年には「ワンタッチパス」というICカードとウェブサイトを活用したCRM(顧客関係管理)の共通システムを導入してきました。これを第1次導入と位置付けると、今回のこの戦略は第2次の戦略展開であると位置付けられると思います。その中で今回、「Club J.LEAGUE」というスマホアプリをリリースしました。これは、どんな背景や課題から生まれてきたものなのですか。

杉本:一番大きなところからいうと、「従来のワン・ツー・ワン(one-to-one)型CRMからの進化」を挙げることができます。ワン・ツー・ワン・マーケティングは、1度来場していただき、接点を作れるようになったサポーターに対して再来場を促すことには有効だと思います。つまり、既存のサポーターの熱量を保つことには向いているものでした。

 しかし、それだけでは固定客ばかりになってしまう。新たなサポーターにスタジアムに来てもらって、試合を楽しんでもらうことが改めて大事だと思うのです。

 そのためにリーグや各クラブが努力することはもちろん大事で、その努力が成果として現れて、ここ数年は来場者数も伸び、一定の成果が出ていることは確かです。ただ、このままでは今後目指しているレベルには届かない。そのためにはさらに進化したプラットフォームが必要だという認識にいたったわけです。

新たなサポーターを呼び込む仕掛け

そのためのスマホアプリというわけですね。時代の流れからすると、スマホ対応はもはや当たり前ともいえます。しかし、一方で今やスマホのアプリはレッドオーシャン(激しい競争状態)で、リリース直後にダウンロードが一時的に伸びても、翌月にはランキング外に消えていくという厳しい環境でもあります。単にアプリを出しただけでは新規サポーターを取れるというものでもないと思いますが、そこにはどんな仕掛けがあるのですか。

杉本:まずはアプリとしての基本機能を充実させました。試合日程が分かる、Jリーグに関連するニュースを読むことができる、チケットを購買できる、クラブのホームページやSNSとリンクされているなどです。

 さらに今回、新たなサポーターを呼び込むための仕掛けを入れました。

 第1に、既存の熱量が高いサポーターが、友人や知人を呼び込むための仕掛けです。第2に、Jリーグには多くのパートナー企業がいます。このパートナーが持っている顧客をお互いに活用する仕掛けを初めて導入してみました。第3に、これまで公式戦がある週末近くにしか接する機会をなかなかつくれなかったところを、パートナー資源を活用し、平日にも増やすような仕掛けを導入したことです。