一方、国内のプロサッカーでは、J1で全試合のトラッキングデータをトラキャブで取得しています。ただし、専用カメラはスタジアムに常設されていません。そこでデータスタジアムが機材の設置からデータの取得・加工まで運営を請け負っています。トラキャブの専用カメラは、異なる方向を向いた3台のカメラを内蔵したボックス型のもので、それをピッチを見渡すように2カ所に設置して撮影します。

 トラキャブは1秒間25フレームの映像から、「誰がどこにいたか」という座標データを取得します。それを基に各選手の「走行距離」「スプリント回数」「トップスピード」などを算出します。

サッカーでは、トラキャブの専用カメラをスタジアムでピッチを俯瞰する場所に2台設置(図:データスタジアム)

 Jリーグにはデータの加工部門がないため、データスタジアムがデータの加工までを請け負い、各チームに走行距離、スプリント回数、トップスピードといったデータをレポーティングしたり、メディアに提供したりしています。

データスタジアムでは、担当者が試合の映像を見ながらプレーデータを手作業で収集しています。トラッキングシステムによるデータ収集の自動化は、御社にどのような影響を与えていますか。

金沢:トラキャブによるデータ抽出は自動ですが、基本的には「半自動」と言えます。最初に、「この人がこの選手だよ」というタグ付けをしておけば、試合が始まると自動追尾します。しかし、接触プレーやセットプレーがあったりするとタグが外れてしまうので、手作業で直す必要があります。

 また、データスタジアムがもともとやっている手作業によるタグ付けが不要になるわけではありません。トラキャブには2つの問題があるからです。1つは、トラキャブのボールのトラッキング精度が低いことです。基本的に人間を追尾するよう設計されているため、高速で移動するボールを正確に追えません。さらに、3次元で追っていないので、ボールが地をはっているのか、空中で動いているのかなどの判別ができません。

トラキャブの分析アプリケーションのイメージ(図:データスタジアム)

 もう1つは、ボールを追尾したところで、そのプレーが「クリア」「パス」「シュート」なのか、“意味づけ”が自動でできません。それを手作業でやるのです。Jリーグが各チームに提供しているデータよりも詳細なデータが欲しいチームに対しては、有償でこうしたデータを提供しています。