選手やボールの動きを追尾するトラッキングシステムや、GPS(全地球測位システム)などを活用した「スポーツ競技における運動情報の可視化」が急速に進んでいる。選手の能力改善やチームの戦術構築、チーム編成、スポーツ放送の演出強化──。可視化によって集められたビッグデータは、スポーツビジネスにとって“宝の山”である。スポーツデータ活用の最前線と未来を、野球やサッカーなどの試合のデータの取得や外部への提供をしているデータスタジアム(東京・港)のベースボール事業部アナリストである金沢慧氏に聞いた。前後半の2回に分けて紹介する。
(聞き手は日経テクノロジーオンライン 内田 泰)

国内ではプロサッカーも活用
プロスポーツの試合のデータ化や活用は米国がかなり先行していましたが、国内でもここ数年で進んでいると聞いています。最新の状況を教えてください。

金沢:米国では例えば、米大リーグ機構(MLB)が投球の速度や軌道を追跡するシステム「PITCHf/x」(米Sportvision)を、2008年には全球場に導入しました。そして、軍事用レーダーを応用して投球の速度や回転数、打球の打ち出し角度や推定飛距離などを算出する「TrackMan(トラックマン)」(デンマークTRACKMAN)と、専用カメラでグランド全体を撮影して選手の動きを追跡する「TRACAB(トラキャブ)」(米ChyronHego)を組み合わせて、「STATCAST(スタットキャスト)」というブランド名のシステムを、2015年に全球場に導入しています。
それに比べると、日本プロ野球組織(NPB)はまだMLBに追い付いていないといえます。ただし、トラックマンについては既に過半数の球団の本拠地に導入済みで、2018年に導入を予定している球団もあります。
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