200社アプローチしてアポ3社

スタイルを変更したことは、協賛企業を集める上でも役立ったのでしょうか。

松崎:はい、大いに効果を発揮しています。

 現在、日本ブラインドサッカー協会には12社のパートナーをはじめ、30社ほどの協賛企業についていただいています。かつては自分たちがどういう価値を企業側に提供できるかをきちんと説明できておらず、「日本代表は頑張っているので応援してください」「遠征費が足りないので協力してください」というようなスタイルで企業を回っていました。

 しかし、それでは企業側も協力することはできません。実際、2008年頃は200社ほどにアプローチをかけても、アポイントを取れるのは3社ほど。そのうちの2社は1度お会いしただけで終わってしまい、残りの1社はただお茶を飲むお友達のようになってしまいました(笑)。でも今は、「混ざり合う社会の実現」という明確なビジョンがあるので、日本代表が活躍することや、スポ育や企業研修を実施することで、その目標に近づけるということをしっかりと説明できるようになりました。

 こうしたことを説明できるようになると、数あるパラリンピック競技の中でもブラインドサッカーを応援していただくと、地域社会や企業の中で多様性の推進につながることが、はっきりと理解していただけるんです。

日本ブラインドサッカー協会では、主要なクライアントを「スポンサー」ではなく、「パートナー」と呼んでいます。

松崎:何のパートナーかというと、私たちが目指すビジョンに共感いただき、共に混ざり合う社会を築いていくためのパートナーです。

 もちろん中には純粋な広告効果を目的としている企業もありますが、そうした企業であっても、我々からは研修プログラムを提供することを出来る限り契約書に明記しています。単純に広告の費用対効果だけを見るのであれば、もっとメジャーな競技やスポーツイベントに出資をした方が効果はあります。「広告効果+多様性の理解度」をパートナー社内で広める、そのような価値を提供するようにしています。

 こうした取り組みのおかげで、今、企業との連携は非常にスムーズになったと感じています。ただ、その一方で広告効果にのみ重きを置いた企業とはなかなか枠組みが作れていないという事実もあります。この点は、乗り越えなくてはならない時期が来ているとも思っています。

世界も認める協会運営

現在、ブラインドサッカー協会の収入の内訳はどのようになっているのでしょうか。

松崎:約45%が法人からの協賛金・寄付金、約30%が事業収入。残りの約20%が国や自治体からの補助金・助成金です。

 事業収入は、もちろん企業研修に対する費用もありますが、それだけではありません。実は競技用品が意外と売れるんですよ。主なものはブラインドサッカーで使用する、音が鳴るボールです。これは私たちが独占販売をしているような形で、学校や企業だけではなく、老人ホームなどからも購入いただいています。最近では常に在庫切れしているような人気商品です。行政からの事業受託費も事業収入に入ります。

松崎英吾氏。東京の日本財団パラリンピックサポートセンターの共同オフィスにて

障害者スポーツの競技団体の場合、収入の80~90%を補助金・助成金で賄っているということも珍しくありません。その中で自立的な運営で収入を得ているというのは、世界的にも珍しいことなのでしょうか。

松崎:他の競技については分かりませんが、サッカー界に関しては、CPサッカー(脳性まひの選手によるサッカー)やアンプティサッカー(上肢、下肢の切断障害を持った選手によるサッカー)なども含めて、単独競技で自立的な運営をしている協会は世界でも稀有だと思います。

 イングランドでは、プレミアリーグを統括するFA(フットボール・アソシエーション)がブラインドサッカーも統括しています。FAは自分たちのプログラムを海外に導入するために各国を巡っているのですが、そんな彼らでも、日本ブラインドサッカー協会のような運営をしているところは「見たことがない」と言っていました。

後編に続く)

スポーツイノベイターズ オンライン 2017年7月12日付の記事を転載]