スマートアリーナ、つまり「アリーナ×デジタル」について、葦原さんのビジョンを教えてください。

葦原:キーワードは、先ほどからお話ししているように「パーソナライズ」です。アナログではパーソナライズできません。テレビも放送こそデジタルですが、個人の趣味嗜好に合わせてパーソナライズされた情報は出てきませんので。

 試合会場内でも、アリーナの大型ビジョンに出せる情報は限られていますし、観戦者の多くが共通して見たい情報も限られていると思うんですね。だから、あとは差分の情報をいかにスマホで見せられるかということが重要だと思っています。

 例えば、マニアはより深い情報の方がうれしい。でも、私はマニアではないので、それよりも顔写真のような基本的な選手情報がうれしい。もしくは、ファールが起きた時に、どんなファールプレーが起きたのか、ルールの詳細を知らない人にとっては難しくて分からない。だから、何が起きているのか、きちんとわかるようにしてほしいとか。欲しい情報は本当に人それぞれですから、コアなファンか、ライトなファンか、あるいは性別の違いなどに応じて、スマホで新しいコンテンツを表現できるといいですよね。

 富士通さんは、いい要素技術をいっぱい持っています。例えば、3次元(3D)センシング技術は結構すごいですよ。あれはなかなか海外ではできないのではないでしょうか。映像を基に3ポイントシュートを打つときの角度や、速度をすぐに算出する技術があって、3ポイントシュートを打つ際の選手の立ち位置が遠くても近くても、実は最適な角度にあまり違いがないといったことがよく分かる。素人目には、遠いほど角度を上げないと届かないと思ってしまうじゃないですか。

 そういう選手のプレーに関するデータが、映像から出てきてしまう。結構、すごいと思います。まだ実証実験中ですが、そういう基礎技術ができつつあるんですよね。

次回に続く)

執筆者/上野 直彦(うえの・なおひこ)/スポーツジャーナリスト

兵庫県生まれ。早稲田大学スポーツビジネス研究所・招聘研究員。ロンドン在住の時にサッカーのプレミアリーグ化に直面しスポーツビジネスの記事を書く。女子サッカーやJリーグも長期取材している。『Number』『AERA』『ZONE』『VOICE』などで執筆。テレビ・ラジオ番組にも出演。初めてJユースを描いたサッカー漫画『アオアシ』で取材・原案協力。構成や編集に協力した書籍に『全くゼロからのJクラブのつくりかた』(東邦出版)、『ベレーザの35年』(ベレーザ創部35周年記念誌発行委員会)、『国際スポーツ組織で働こう!』(日経BP社)、著書に『なでしこのキセキ川澄奈穂美物語』(小学館)、『なでしこの誓い』(学研教育出版)がある。NewsPicksで「ビジネスはJリーグを救えるか?」を好評連載中。Twitterアカウントは @Nao_Ueno

スポーツイノベイターズ オンライン 2017年9月21日付の記事を転載]