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世界ランキング12位(2018年2月上旬時点)のジョアンナ・コンタ選手(右)を指導するトップコーチ、ウィム・フィセッテ氏(左)。最近はSAP社が開発したアプリを導入したモバイル端末をコートに持ち込み、パフォーマンスデータを基にアドバイスを行っている。(写真:ロイター/アフロ)

 スポーツ界の中でも最もデータ活用が進んでいる競技の一つと言える、女子プロテニス。競技団体であるWTA(女子テニス協会)は2015年シーズン、「オンコートコーチング」(1セットにつき1回、ゲーム間ないしセット間にコーチがコート内に入って選手に指示できる仕組み)において、コーチがiPadを使って試合のデータのリアルタイム分析を選手に見せながら、戦術や修正点についてアドバイスすることを認めた。

 アプリの開発を担当したのは、ドイツのIT(情報技術)大手のSAP社だ。同社の担当者は、WTAのツアーに3年という長期間帯同し、選手やコーチの意見を参考にしてアプリを作り上げた。

オンコートコーチングで使えるデータのリアルタイム分析アプリ「SAP Tennis Analytics for Coaches」の画面。データは、2017年9月の東レ パン パシフィックオープンでの尾﨑 里紗選手のもの

 試合前にデータを分析して戦術を練ったり、試合後にデータを見てプレーを振り返ることは他の競技でも珍しくない。しかし、試合中にリアルタイム分析にアクセスできるとなると、それが許されている競技は少ない。オンコートコーチングによって試合の流れが大きく変わる可能性があり、それに賛同しない選手やコーチもいるからだ。「拮抗した試合を増やして面白くすることを目的」とした、WTAの大きな決断だったと言える。