データ分析で「5~10%は実力アップ」

 SAP Tennis Analytics for Coachesは、コートに設置された8台のビデオカメラ(他に2台が選手の動きをトラッキング)でボールをトラッキングするHawk-Eyeの生データをクラウド上に集積し、選手やコーチから要望の多かったデータや分析結果を専用アプリ上で表示する。データは15秒に1回更新される。

 コーチはオンコートコーチングの際に、WTAが公認したiPadをコート上に持ち込んで、選手にアドバイスできる。アプリ上で参照できるのは、試合のテレビ放送でもよく紹介される、サーブの確率やウィナー(ラリーで相手にボールを触れられずに取ったポイント)、アンフォーストエラー(自分からミスをしたショット)の本数などのほか、サーブを打った方向(フォアサイドかバックサイドか)、フォアとバックのストロークについてコート上のどこから打って、相手コートのどこに着地したかなどがボールの軌道で示される。

進行中の試合のそれまでのショットのデータ。フォアハンドとバックハンドについて、どこから打って相手コートのどこに着地したか、ウィナーが何本か、アンフォーストエラーが何本かなどが一目で分かる。データは、2017年9月の東レ パン パシフィックオープンでの尾﨑 里紗選手のもの

 こうしたデータから、例えば「相手に押し込まれてミスをしているので、もう一歩ラリーする位置を下げた(自陣の後方に下がる)ほうがいい」などと、試合中に戦術や修正点について確認ができる。「これまでは試合中に選手に指示する際、根拠となるデータがなかった。決してコーチが不要になるわけではないが、データが手元にあることによってコーチが選手にアドバイスしやすくなった」(Lewis氏)。

 なお、試合のすべてのデータはSAP社のクラウド上に蓄積されている。アプリはブラウザー上で動作するので、どんなモバイル端末でも「いつでもどこでも」参照できる。もちろん、試合前や試合後もチェックできる。

 ケルバー選手は、「試合前に対戦相手のデータを見たり、試合後はデータでその日のプレーを振り返ったりする。データは私に、より自信を持たせてくれる。5~10%は実力が上がっている感じがしており、これは世界のトップレベルでは重要なこと」と述べる。

 「重要視しているデータは、相手がどういうプレーをしているのか、どういうサーブをどこに打っているのか、ショットは浅いのか深いのか。それらをチェックして戦術を立てるのに使っている」(同氏)。

 リアルタイム分析というデジタル革命がスポーツの“戦いの場”にまで押し寄せてきたことによって、アスリートにはフィジカルな能力や競技のスキルだけでなく、「データを上手に活用する力」も求められるようになってきたと言えよう。

次回に続く)

スポーツイノベイターズ オンライン 2017年11月6日付の記事を転載]