女子プロテニスのアンゲリク・ケルバー選手(ドイツ)は、2018年1月に開催された全豪オープンでベスト4まで勝ち進んだ (写真:AFP/アフロ)

 「以前はコーチのアドバイスに『OK』とは言っても、内心では同意していないこともあった。しかし今は、iPadで実際に起きたことを示されるとコーチの指示に従わざるを得ない。データが唯一の判断基準になった」

アンゲリク・ケルバー選手は、元世界ランキング1位でグランドスラムで2回の優勝経験がある

 この発言の主は、女子プロテニスのアンゲリク・ケルバー選手。2016年には全豪オープンとウィンブルドン選手権という2つのグランドスラム大会で、シングルス優勝を飾り、世界ランキング1位(2018年2月上旬時点で9位)にもなった、トップ選手の一人である。

 ケルバー選手が戦いの場としている女子プロテニスは、スポーツ界の中でも最もデータの活用が進んでいる競技の一つと言っても過言ではない。競技団体であるWTA(女子テニス協会)は2015年シーズンに、「オンコートコーチング」において、コーチがiPadを使って試合のデータのリアルタイム分析を選手に見せながら、戦術や修正点についてアドバイスすることを認めた。

 オンコートコーチングとは、1セットにつき1回、ゲーム間ないしセット間にコーチがコート内に入って選手にコーチングできる仕組みである。WTAは2008年シーズンにそれを許可。導入によって、選手が試合中にコーチのアドバイスをもらえるようになり、接戦が増えたという。「試合内容に確実に変化が起きた。選手はこれまで、コート上では100%孤独だった。でも、今ではプレーのリズムが悪い時に、コーチからアドバイスをもらえる」(ケルバー選手)。さらに、2015年シーズンからは試合中に対戦相手や自分のプレーをデータで振り返ることができるようになったことで、さらに拮抗した試合が増えているという。