(写真=瀬尾 泰章)

 日本のほとんどの伝統音楽家は、すでにある過去の伝統の内側に生きることのみに固執して、その慣習の檻のなかに閉じ込められているようだ。そうした人たちが現代に向けて新しいものを創ろうとすると、すぐに安っぽいポップやロック音楽に結びつき、伝統が本来持っていた気品や隠された力を薄めて再生産する。

 青木涼子はそうした反知性的な伝統音楽家たちとは距離を置きつつ、孤独に優れた知性と感性を世界的なアート市場によって磨きつつ、自身の立ち位置を探し求めてきた。

 「能」の音楽(謡)という恐ろしく深い潜在能力を秘めた芸術を世界に向けて、どのように新しく再創造できるか。それも小さな日本を超えて、真に国際的な芸術の土壌に向けて。

 今、多くの世界の優れた作曲家たちが彼女の活動に注目し、彼女のために新しい音楽を生み出そうとしている。そうして「能」はその奥深く秘められた花を、ようやく静かに開花させようとしている。