(写真=ロイター/アフロ)

 「父が亡くなり反対する人がいなくなったから政治家になった」。初めて会った時、彼女はこう打ち明けてくれた。学者特有の慎重さと控えめさが抜け切れていない、若い政治家だった。

 2014年、民進党内の総統選候補者選出を控えたある会合で、隣に座った私は聞いてみた。「どう? 調子は?」「絶対勝つわよ」。彼女の「進化」を感じた。

 2015年秋に来日した際、外国人記者クラブで質疑応答を含む完璧なスピーチを英語でこなしたことにも感動した。帰国子女でもないのに、英語教師の私でさえ舌を巻く発音の素晴らしさ。「あなた英語上手ね」と褒めたら、その後壇上で開口一番「英語の先生に英語を褒められました!」と聴衆の笑いを誘っていた。

 昔の台湾の政治家は艱難辛苦を乗り越えて成長するパターンがほとんどだったが、蔡英文は台湾人に愛されることで成長してきたリーダーだ。世が新しいものを求める中、彼女はこれからも進化をやめないだろう。