(写真=新津保建秀)

 大学時代ソフトボール部の後輩だった彼が、不思議なバントをした時は度肝を抜かれた。バットを体の前に出して構えるのが常識のバント。なのに、彼はバットを後ろに引き、ミットに入る寸前でボールを捉えて転がした。「引き付けた方が失敗の確率が低いと思った」というのがその理由。一事が万事この調子で、麻雀でも確率論を駆使したその一手一手に泣かされた人は数知れない。

 常識にとらわれない。不合理なことは嫌い。学問の崇高さとか、研究室の縛りとか曖昧な価値観に拘泥することもない。東大准教授の肩書も、それで“アガリ”なんてことは全く考えない人。卒業後、人工知能で第一線を行く今もそこは変わらない。論文を書くだけが仕事じゃない、社会をもっと最適化するのが役目、と自らを鼓舞し続けている。仕事を奪うと言われる人工知能を、「そうじゃないでしょ」と多くの人に証明してくれる未来が必ず来ると思っている。