米軍でさえ実現できなかった「クモの糸」の人工増殖・量産化。「たかがクモの糸」などと侮ってはならない。クモの糸は自然界にあって最も強靭かつ柔軟性のある繊維なのである。1cmくらいに束ねたクモの糸で巨大な巣を作れば、飛んできたジャンボジェット機を空中捕捉できるほどの強度なのだ。そんな偉業を成し遂げてしまった若者が関山和秀君である。遺伝子工学を駆使してクモ糸の大量生産を可能としたのである。その契機(きっかけ)も実に若者らしい。学生同士で飲んでいるうちに、「世界最強の生き物はクモだ」などと大いに盛り上がったことが原点だという。

 まあ、普通の学生であれば酔った勢いで壮大な事業構想くらいは思いつく。しかし、一晩寝れば夢はすっかりしぼんでいつもの日常が戻ってくる。ところが、関山君は違った。翌日から本気で研究を開始して学生ベンチャー「スパイバー株式会社(この駄洒落気味の社名も飲んだ時に決めたものだ)」を設立、2015年には量産化を実現してしまった。決して派手さを前面に押し出すようなベンチャー経営者のタイプではない。しかし、逢うたびに経営者としての力量を上げている。「夢が人を創る」、関山君を見ているとその言葉の意味が分かる。