(写真=神藤剛)

 よく言えば自然体、悪く言えばまだ荒削り。コーチ仲間から評判を聞いた僕が、YouTubeの中の彼を見たのが3年前。まだ幼さが残る中学生の彼がそこにいた。

 高校生となった今、彼の勢いは止まらない。2015年7月の世界ユース選手権では200m20秒34で、ウサイン・ボルトの大会記録を更新。勢いそのままに夏には世界陸上北京大会へ出場し、200mで堂々の準決勝進出を果たした。短距離のタイムとしてはあり得ない躍進の仕方だ。

 実力はお墨付き。ポテンシャルもある。アフリカ系の血が流れる体躯は文字通り「恵まれた体」だ。ただ、ここまでなら過去にも、同じような10代の有望株はいた。

 彼のユニークさはその精神面にある。どんなに強い選手でも、世界に出れば、予選から準決勝、決勝とタイムを落とすのは珍しくない。彼は進めば進むほど走りがよくなるタイプ。走り終えた後のコメントは、冷静な自己分析に始まり、次のレースへの抱負でさらりとしめる。メンタルが“おっさん級”なのだ。何年も世界で経験を積んでいる選手でも、この“ふてぶてしさ”を会得するのは簡単にはいかない。それを16歳の彼が会得しているというのだから驚く。「人間力」とも呼べる能力がすでに備わっているところに、今後の可能性を大いに感じたくなる。