(写真=新津保建秀)

 鈴木健さんのことは著書で初めて知り、若手に大変な学者がいるなあと思った。それで一知半解の書評を書いた。細胞は膜、経済はお金、選挙は投票、扱っているテーマは当たり前に見えるが、内容はとんでもない。そういうシステムを根底からあらためて考えようというのである。こんな人、見たことないわ。

 そのあと対談の企画があって、ぜひ鈴木さんを入れてくれと頼んだ。学者というと細くて神経質という古典的イメージがあったが、それが全然違う。堂々たる体躯で、これなら心配はない。私は解剖学の出身で、つい体格の吟味をしてしまう。頭の中は見えないけれど、体形は見える。これなら大丈夫だ。そう思った。なぜ大丈夫かといわれても、わからない。説明する気にならない。要するに大丈夫である。

 学者という側面を持ちながら、いまはスマートニュースというインターネットの会社の会長だという。その説明を受けたが、これも私には一知半解。でもちゃんと進んでいるらしい。話してみると、さらに問題がない。わかりやすく、きちんと話してくれる。当たり前だが、これがきちんと自分で考える学者の特徴である。夏目漱石が自分本位と称して、学問的にいわば自立したのがロンドン留学の最後の時期だった。年齢は無関係に、鈴木さんはその時期をすでに過ぎている。もっと一般の人にわかる話ができることは間違いない。でもそれは具体的な仕事の方に表現されるのかもしれないな。そうも思う。いずれにせよ大いに期待する人材である。