(写真=ロイター/アフロ)

 林家正蔵を襲名する前は、「こぶ平」で通っていた。父、初代林家三平が付けたこの名前が、私はとてもイヤだった。「ぶ細工」「ぶ器用」。「ぶ」が付くものにロクなものはない。父は噺家を継ぎたいと言う私を、あえて突き放したのだ。今では父の気持ちがよく分かる。

 商いの世界では、親は子を丁稚奉公に出す。スズキをグローバル企業に育て上げた大経営者・修氏は、子の俊宏氏をトヨタグループのデンソーやGMに送ったと聞く。偉大な親を子が超えるのは並大抵ではない。しかし、世襲の苦労を知る人は、現場の苦労にも寄り添えるはずだ。

 私は軽自動車に「落語臭」を感じている。気取らず、コストがかからない。軽はレクサスにはなれないし、落語も華やかさでは歌舞伎に見劣りする。だが、二つに共通するのは、「常に大衆のもの」であることだ。たとえ無骨でも誇りだけは失わない。そういえば父は「野ぶ士たれ」ともよく言っていたなあ。