(写真=ロイター/アフロ)

 今や世界中の人が、アンゲラ・メルケル首相をドイツそのもの、欧州そのものであるかのようにみなしている。しかし、かつて東ドイツの物理学者だった彼女は、西ドイツに旅行することはおろか、政治的意見を親しい家族に語ることすら許されていなかった。1990年のドイツ再統一は科学に専念していた彼女の人生を再構築する契機となり、その後、政治家として花開いた。

 彼女は今日の世界において、もっともパワフルな女性だろう。本人は気に入っていないが「欧州の女王」とまで呼ばれるほどだ。だが実際の彼女はとても節度のある慎み深い人柄だ。だからこそ、ドイツ以外の欧州の国々の政府が、新たなリーダーとしてのドイツの役割を認め、時に求めるようになった。

 メルケル首相は多方面に及ぶ危機管理に対して、その主導力を発揮することが求められてきた。世界金融危機、欧州債務危機、ウクライナ紛争、英国の欧州連合(EU)離脱懸念、そして、欧州に波のように押し寄せる難民の問題などだ。これらの危機に対して、欧州や世界での立場を見失うことなく、ドイツの国益を守り責任を果たしてきた。粘り強く交渉を重ねることで各国首脳の尊敬を集め、バランスのよい政治をしている。

 難民問題と過激派組織イスラム国(IS)の欧州におけるテロ問題の解決は、メルケル首相にとって新たな挑戦となる。事態は予断を許さない。だが、彼女特有の問題解決手法とプラグマティズム(実用主義)によって、今後もリーダーシップを発揮し続けることは間違いない。