2007年11月に人間の皮膚細胞からiPS細胞の樹立成功を発表した直後、高橋博士が、「この技術を使い、5年後には眼疾患の治療法の臨床研究を実施したい」と語られたとき、「すごいことを言う研究者だ」と思ったことを覚えている。

 そして、彼女が本当にすごいのは、それを実現したことだ。昨年の夏、厚生労働省の審査・承認を経て、高橋博士が中心となるチームによるiPS細胞を用いた加齢黄斑変性の世界初の臨床研究がスタートした。対象となるのは加齢黄斑変性の中でも一部のタイプだが、将来的には他のタイプや他の眼疾患の治療も目指している。

 しっかりとしたビジョンを持ち、それに向かって一直線に研究を進めていく力と周囲の研究者や医療関係者をまとめる卓越したリーダーシップには感服する。

 しかし、これから正念場がやってくる。約1年後には、数名の患者さんの体細胞から作ったiPS細胞由来の網膜色素上皮細胞が、その患者さんに移植される予定と聞く。

 油断は禁物だが彼女らのチームなら必ず成功し、次につなげてくれると信じているし、私たちも精一杯サポートしていくつもりだ。