(写真=朝日新聞社)

 「疑わしきは被告人の利益に」。日本の法曹界は古くからこの言葉を掲げてきた。私は司法の現場を長らく見てきたが、実際には必ずしもこの言葉通りの判決が下されているとは限らない。特にここ数年の検察庁の不祥事には大きな落胆と憤りを覚えていた。

 そんな折、一つの明るいニュースが飛び込んだ。弁護士出身の鬼丸かおるさんが最高裁判事に就いたというのだ。弁護士出身で、それも女性の最高裁判事は日本初である。

 本来ならば、こうした人事はもっと早くに実現せねばならなかったのだろう。だがその一方で、とても古い体質の法曹界がようやく未来に向けた一歩を踏み出したことに、私は大きな期待を寄せている。

 鬼丸さんは弁護士時代から高齢者や障害者の権利の保護など、弱者の立場に立った活動を重ねてきた人物である。この彼女の姿勢こそ今の法曹界には欠かせないものであろう。「弱者の視点」を取り入れ、本当の意味で「疑わしきは被告人の利益に」という言葉を実現すること。信念に従って、勇気を持って判決を下すことが求められている。課せられた責務は大きい。