(写真=大高和康)

 エチオピアは周りをイスラム教諸国に囲まれ、かつては欧米列強の植民地支配と対峙した民族主義の砦だ。人々は、自らの文化を守るために、戒律を重んじる。女性は髪をきつく編んで、十字架の模様をあしらった白いロングドレスで正装する。

 そんな社会に、鮫島弘子はデザインを仕事とする青年海外協力隊として2002年に派遣された。しかし、職場には自分が想像していた仕事はなかった。自分の居場所に悩んだ彼女は、活路を求めて当時まだ珍しかったファッションショーを企画し、デザイン、演出、監督すべてを担った。

 伝統的な白い衣装をカラフルに染め、スカートの丈を短くした。現地で人々がこよなく愛する黄色いキクの花をモチーフにした斬新なドレス。意表を突く華やかなデザインは、大きな会場をうめつくした人々の喝采を浴びた。その鮮烈なデビューは今でも記憶に残っている。

 今、エチオピアはアフリカ屈指の経済成長を示す国である。伝統を大切にしつつも、変化に向けてひた走る。国の新しい価値観を、彼女は10年前にファッションショーで示したのだろう。