(写真=アフロ/ロイター)
(写真=アフロ/ロイター)

 会ったことも、話したこともない、この人の気持ちが僕にはよく分かる。トヨタ自動車とはスケールが違い過ぎるが、祖父が印刷業を営み、僕はその跡取りだった。「1度きりの人生なんだから」と、僕は家業を継ぐのを辞めて俳優を目指したが、豊田章男さんが僕のように自由になれる訳がない。思いを巡らせると、真綿で首を締められるような苦しみと葛藤の半生だったに違いない。

 2010年に起きたプリウスのリコールは、僕のところにも波及した。それまでアメ車に乗っていたが、ワイフの一押しで低燃費のプリウスに乗り換えしばらくすると、リコールの案内が来た。米国議会の公聴会に呼ばれた章男さんの姿は痛々しく、そこにもまた、創業家の御曹司であることの苦悩を見た。

 間もなく還暦を迎える僕にとってプリウスは「年相応のいいクルマ」。だが、最近、ピンク・クラウンが発売されたと聞いて、心がざわめいている。かつてはオヤジ臭いクルマの代名詞。章男さんは、それを逆手に取って見事に、「変革する企業」を打ち出したわけだ。ピンク・クラウン、悪くない。

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