(写真=柴田謙司)

 京都の西陣織の老舗・細尾。同社の紡ぎだすファブリックが、ルイ・ヴィトンやシャネル、ディオールという名だたる高級ブランドのインテリアに使われていることをご存知だろうか。

 「日本に凄いファブリックがある」。仲のいい北欧人家具デザイナーからこんな話を聞き、細尾くんの存在を知った。その後いくつかの縁が重なって彼と出会う。

 300余年も続く老舗企業の跡取り。そう聞くと堅いイメージを抱いてしまう。だが実際に会った彼は拍子抜けするほど僕と感性が似ていた。年も近く、フットワークも軽い。それも家業を継ぐ前は音楽活動をしていたというだけあって、夜にはクラブではっちゃけるノリの良さもある。

 何より感動したのは、細尾くんの感性が伝統ばかりに縛られていないことだ。伝統を大切にする一方で、モダンな感性も備えている。思えば西陣織だって、かつての日本人にとってはモダンと粋の極みだったはず。ルイ・ヴィトンやシャネルといった名だたるメゾンは、伝統を守りながら挑戦を続けているから、どんな時代も人々から愛されている。

 伝統と革新――。細尾くんは、その重要性を直感的に理解している。今の時代に合った西陣織を打ち出したから、世界のビッグメゾンが彼を評価した。西陣織の“宣教師”。彼の存在が、日本の伝統産業を変える。