(写真=アフロスポーツ)
(写真=アフロスポーツ)

 取材を受ける少女の表情はいつもどこか硬かった。周りを囲む記者は年配の男性ばかり。まだ十代前半だった彼女は、大人たちの矢継ぎ早の質問に戸惑い、時に攻撃的な匂いを感じ取ったのかもしれない。今もその表情にさして変化は見られない。だが、口調は随分としっかりした印象を受ける。言葉は淀みなく、答えたくない質問には毅然とした態度で応じる。その内面に自信が宿り始めている証拠だ。

 小学2年からスキージャンプを始めた少女は昨季、女子W杯で日本人初の総合優勝を達成。16歳4か月でのスキーW杯総合Vは男女通じて史上最年少の記録だった。父の寛也さんが「スキーをやっている人間はみんなW杯で勝ちたい。五輪のように一発勝負ではないから」と話すように、このタイトルが少女にとって大きな転機となったのは間違いない。

 ジャンプの飛距離は紛れもなく世界一。その成長に合わせるように女子ジャンプのW杯が創設され、五輪の正式種目採用が決まるなど時代も味方する。ライバルのサラ・ヘンドリクソン(米国)が負傷中の今、ソチ冬季五輪金メダルの大本命。「五輪までの間、しっかりと準備したい」と話す17歳はソチで主役となった瞬間こそ硬い仮面を脱ぎ捨ててくれるに違いない。

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